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うつ病とは

【専門医が解説】もしかして「うつ病」かも?心の不調を感じたら知ってほしいこと

「最近、なんだか気分が晴れない…」
「前は楽しかったことが、楽しめない…」
「疲れやすくて、何もやる気が起きない…」

このような心の不調が続いていませんか?
それはもしかしたら、うつ病のサインかもしれません。

うつ病は「心の風邪」とも言われるように、決して特別な病気ではなく、誰でもかかる可能性があります。そして、風邪と同じように、早く気づいて適切な対処をすれば、回復できる病気です。

この記事では、「うつ病とは何か」という基本から、症状、原因、治療法、そしてご家族にできるサポートまで、詳しく、そして分かりやすく解説していきます。一人で抱え込まず、まずはうつ病について正しく知ることから始めましょう。


うつ病とは?- 単なる「気分の落ち込み」との違い

誰でも、嫌なことがあれば気分が落ち込んだり、やる気が出なくなったりします。しかし、うつ病は単なる一時的な気分の落ち込みとは異なります。

一言でいうと、うつ病は「脳のエネルギーが欠乏した状態」です。脳内で情報を伝える「神経伝達物質」という物質のバランスが乱れ、感情や意欲、思考などをうまくコントロールできなくなってしまうのです。

一時的な気分の落ち込みうつ病
原因はっきりした原因があることが多い特定の原因がない場合もある
期間数日で自然に回復する2週間以上、ほぼ毎日続く
日常生活への影響多少の影響はあるが、生活は送れる仕事や家事など日常生活に大きな支障が出る
回復時間が経てば自然に回復する適切な治療(休養・薬・精神療法)が必要

自分の力だけではなかなか元の状態に戻れず、日常生活に大きな支障が出てしまうのが、うつ病の特徴です。意志の弱さや性格の問題ではありません。

うつ病の種類

うつ病と一言で言っても、症状の現れ方によっていくつかの種類に分けられます。

  • うつ病(大うつ病性障害)
    一般的に「うつ病」と呼ばれるもので、気分の落ち込みや興味の喪失といった「うつ状態」が長く続くタイプです。
  • 双極性障害(躁うつ病)
    気分が異常に高揚する「躁状態」と、気分がひどく落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。うつ病とは治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
  • 季節性感情障害(冬季うつ病など)
    秋から冬にかけてうつ症状が現れ、春になると回復するというように、特定の季節に症状が繰り返されるタイプです。日照時間の影響が関係していると考えられています。
  • 産後うつ病
    出産後の数週間から数ヶ月の間に発症するうつ病です。ホルモンバランスの急激な変化や、育児のストレスなどが関係していると言われています。

原因は一つではありません

「なぜ、うつ病になってしまったのだろう…」とご自身を責めてしまう方が多くいらっしゃいますが、うつ病の原因は一つではありません。様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
【うつ病の主な要因】

  • ストレス
    仕事のプレッシャー、人間関係の悩み、家族との問題、死別体験、病気など、心身に大きな負担がかかる出来事が引き金になることがあります。
  • 環境の変化
    昇進、転職、引越し、結婚など、喜ばしい出来事であっても、大きな環境の変化がストレスとなって発症のきっかけになることがあります。
  • 性格傾向
    真面目で責任感が強い、完璧主義、周りに気を使いすぎる、頼まれると断れないといった性格の人は、ストレスを溜め込みやすい傾向があると言われています。
  • 脳の機能異常
    脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった、感情や意欲に関わる神経伝達物質の働きが悪くなることが、うつ病の直接的な原因の一つと考えられています。
  • 身体の病気
    甲状腺の病気やがん、脳卒中などの身体の病気が原因で、うつ症状が現れることもあります。

これらの要因が、まるでコップの水が溢れるように、その人の許容量を超えたときにうつ病が発症するとイメージすると分かりやすいかもしれません。

気づいてほしい「うつ病のサイン・特徴」

うつ病になると、ご本人も気づかないうちに言動や様子に変化が現れます。周りの方が「いつもと違う」と気づいてあげることが、早期発見につながることも少なくありません。

  • 表情が暗く、口数が減る
  • 涙もろくなる
  • 趣味や好きだったことを楽しめなくなる
  • 服装や身だしなみに構わなくなる
  • 仕事や家事のミスが増える、集中できない
  • 学校や会社を休みがちになる
  • 周りとの交流を避けるようになる
  • お酒の量が増える

うつ病の症状 – こころとからだの両方に現れます

うつ病の症状は、精神的なものだけでなく、身体的なものとしても現れるのが特徴です。身体の不調で内科などを受診しても原因が分からず、実はうつ病だったというケースも少なくありません。

【こころの症状(精神症状)】

  • 抑うつ気分:わけもなく悲しい、憂うつ、沈んだ気持ちが続く
  • 興味・喜びの喪失:これまで楽しめていたテレビや趣味が楽しめない
  • 意欲の低下:何もする気が起きない、億劫に感じる
  • 思考力・集中力の低下:考えがまとまらない、決断できない、本が読めない
  • 不安・焦り:そわそわして落ち着かない、漠然とした不安がある
  • 自責の念:自分はダメな人間だ、周りに申し訳ないと自分を責める
  • 希死念慮:消えてしまいたい、死にたいと考える

【からだの症状(身体症状)】

  • 睡眠障害:寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)
  • 食欲の変化:食欲がない(食欲不振)、または逆に食べ過ぎてしまう(過食)
  • 疲労感・倦怠感:身体が鉛のように重い、疲れが取れない
  • 身体の痛み:頭痛、肩こり、腰痛、関節痛
  • その他の症状:動悸、息苦しさ、めまい、吐き気、便秘、下痢、性欲の減退

もしかして?と思ったら「セルフチェック」

ご自身の状態が気になる方は、セルフチェックを試してみましょう。
以下の質問項目について、ここ2週間のご自身の状態に最も近いものを選んでみてください。

【うつ病セルフチェックリスト】

  1. 気分が落ち込んだり、憂うつな気分になることがありましたか?
  2. 物事に対して興味がわかない、または楽しめないことがありましたか?
  3. 寝つきが悪い、または眠りすぎることがありましたか?
  4. 疲れやすく、気力がないと感じることがありましたか?
  5. 食欲がなかったり、逆に食べ過ぎたりすることがありましたか?
  6. 自分はダメな人間だと感じたり、自分を責めたりすることがありましたか?
  7. 新聞を読んだりテレビを観たりするのに集中するのが難しいと感じましたか?
  8. 周りから見て、そわそわしたり、逆に動きが遅いと言われることがありましたか?
  9. 「いっそ死んでしまいたい」と考えたり、自分を傷つけようとしたりすることがありましたか?

<結果の見方>
上記の質問のうち、1か2のどちらかを含み、合計で5つ以上が「ほとんど毎日」当てはまる場合、うつ病の可能性があります。

※注意※
このチェックリストはあくまで簡易的な目安です。正確な診断のためには、必ず専門の医療機関(心療内科・精神科)を受診してください。

うつ病の治療・自分でできる対処法

うつ病の治療は、「休養」「薬物療法」「精神療法」の3つを柱に行います。

【専門的な治療法】

  1. 十分な休養
    何よりも大切なのが、心と身体をしっかりと休ませることです。 脳のエネルギーが枯渇している状態なので、まずはエネルギーを充電する必要があります。医師の判断によっては、仕事を休む(休職)ことも有効な治療となります。
  2. 薬物療法
    乱れた脳の神経伝達物質のバランスを整えるためにお薬(主に抗うつ薬)を使います。お薬には、不安や不眠を和らげる効果も期待できます。効果が出るまでに2〜4週間ほどかかることが多く、副作用について不安な点があれば医師に相談しながら、自己判断で中断せず、服薬を続けることが大切です。
  3. 精神療法(カウンセリングなど)
    医師やカウンセラーとの対話を通して、ストレスの原因となっている問題や、ご自身の考え方の癖などを見つめ直し、ストレスへの対処法を身につけていく治療法です。代表的なものに「認知行動療法」などがあります。

【自分でできる対処法(セルフケア)】

回復期に入り、少しずつ気力が戻ってきたら、無理のない範囲で以下のことを試してみましょう。

  • 焦らない、自分を責めない:「早く元気にならなければ」と焦る必要はありません。「今は休むのが仕事」と考えましょう。
  • 規則正しい生活:決まった時間に起きて、太陽の光を浴びることから始めてみましょう。生活リズムが整うと、気分の安定につながります。
  • 軽い運動:散歩やウォーキングなど、心地よいと感じる程度の軽い運動は、気分転換になり、睡眠の質を高める効果も期待できます。
  • バランスの取れた食事:脳の神経伝達物質の材料となるタンパク質やビタミン、ミネラルを意識して摂りましょう。
  • 大きな決断は避ける:うつ病のときは、判断力が低下しています。転職や引越し、離婚などの重要な決断は、回復してから考えるようにしましょう。

一人で抱え込まないで「利用できるサポート」

医療機関以外にも、悩みや不安を相談できる窓口や、経済的な負担を軽減する制度があります。一人で抱え込まず、こうしたサポートを積極的に活用してください。

  • 公的な相談窓口
    • 保健所、精神保健福祉センター:お住まいの地域の公的な相談機関です。
    • いのちの電話:電話で悩みを聞いてもらえます。
  • 経済的な支援制度
    • 自立支援医療制度:心療内科・精神科への通院医療費の自己負担が原則1割に軽減される制度です。
    • 傷病手当金:病気で仕事を休み、給与が支払われない場合に、健康保険から手当金が支給される制度です。
    • 障害年金:病気によって日常生活や仕事に支障が出ている場合に、年金が支給される制度です。

ご家族や周りの方にできること

うつ病は、ご本人だけでなく、支えるご家族にとってもつらいものです。どう接したらよいか分からず、悩んでしまう方も少なくありません。ご家族の適切なサポートは、ご本人の回復にとって大きな力になります。

【大切な5つの心構え】

  1. 温かく見守る
    特別扱いせず、これまで通りに、しかし温かい目で見守ってあげてください。「あなたの味方だよ」というメッセージが伝わることが大切です。
  2. 話をじっくり聴く
    アドバイスや意見を言うのではなく、まずは「そうなんだね」「つらかったね」と、本人の気持ちに寄り添い、訴えをじっくりと聴いてあげてください(傾聴)。
  3. 安易に励まさない
    「頑張れ」「気の持ちようだ」といった励ましの言葉は、ご本人を追い詰めてしまうため禁物です。 本人はすでに頑張りすぎてエネルギーが切れている状態だからです。
  4. ゆっくり休める環境を整える
    安心して休めるように、家事の負担を減らしてあげたり、静かな環境を作ってあげたりすることが大切です。
  5. 受診を勧める
    「専門家の力を借りてみない?」と、医療機関への受診を優しく促してあげてください。可能であれば、一緒に付き添ってあげるとご本人も安心できます。

※ご家族自身のケアも忘れずに※
ご本人を支えるご家族も、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていきます。共倒れにならないよう、ご自身の休息時間も大切にし、時には専門家や相談窓口に頼ることも考えてください。


最後に

うつ病は、適切な治療を受ければ必ず回復に向かう病気です。心の不調を感じたら、決して一人で抱え込まず、「少し疲れているのかも」と、まずは当クリニックのような専門機関にご相談ください。

私たちが、あなたの心の重荷を少しでも軽くするお手伝いをいたします。

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