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コラム

眠れない夜を乗り越えるために——不眠とCBT-Iのこと

眠れない夜を乗り越えるために——不眠とCBT-Iのこと|六本松こころのクリニック
六本松こころのクリニックCOCORO NO CLINIC
コラム|不眠・睡眠

「眠れない夜」を乗り越えるために
睡眠薬に頼る前に知ってほしいこと・CBT-Iという選択肢

不眠は「意志の問題」ではありません。正しいアプローチで改善できます。

記事監修
前田 輝 院長精神保健指定医・精神科専門医
「布団に入っても眠れない」「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目が覚めてそのまま」——不眠は非常にありふれた悩みですが、放置すると生活の質を著しく低下させ、うつ病・不安障害のリスクを高めます。

一方、「睡眠薬への依存が怖い」という理由で受診を躊躇される方も多くいます。そこで今回は、睡眠薬なしでも不眠を改善できる「CBT-I(不眠の認知行動療法)」を中心に、不眠への正しいアプローチをお伝えします。

不眠の現状——日本のデータ

30%以上
日本成人で何らかの
不眠症状を持つ割合
4.8%
日本成人の
睡眠薬3か月処方率
21.7%
睡眠で十分な休養が
とれていない成人の割合
出典:日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」/ 厚生労働省「2018年度国民健康・栄養調査」/ PMDAサスメドMed CBT-i適正使用指針(2024年3月)/ 日経メディカル(不眠症 疫学)

不眠の3タイプ

タイプ 特徴 関連しやすい状態
入眠困難布団に入っても30分以上眠れない不安障害・パニック障害・ストレス
中途覚醒夜中に何度も目が覚めるうつ病・加齢・睡眠時無呼吸症候群
早朝覚醒予定より2時間以上早く目が覚めるうつ病(特徴的)・双極性障害
注意:「早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)」はうつ病の特徴的な症状の一つです。気分の落ち込み・意欲低下を伴う場合は、心療内科・精神科への受診をお勧めします。

CBT-Iとは——ガイドラインが推奨する第一選択治療

CBT-I(Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia:不眠の認知行動療法)

睡眠に関する「誤った考え方(認知)」と「眠れなくなる行動パターン(行動)」を修正することで、不眠を根本から改善する心理療法です。米国内科学会(ACP)・日本睡眠学会ともに、慢性不眠症の第一選択治療として推奨しています(薬物療法より先に実施することを推奨)。

📊 CBT-Iと睡眠薬の長期寛解率の比較
長期寛解率(不眠の診断基準を満たさなくなる割合) 0% 10% 20% 30% 40% 41% CBT-I 28% 睡眠薬単独 CBT-Iが 1.82倍の 長期寛解率 (95% CI: 1.15-2.87) 高確実性エビデンス
出典:Furukawa Y, Sakata M, Furukawa TA, Efthimiou O, Perlis M. Initial treatment choices for long-term remission of chronic insomnia disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis. Psychiatry Clin Neurosci. 2024;78(11):646-653. doi:10.1111/pcn.13730
(京都大学・名古屋市立大学・ベルン大学・ペンシルベニア大学 共同研究)
長期的にはCBT-Iが優位(高確実性エビデンス):上記のネットワークメタアナリシス(RCT 13試験・823名)により、長期寛解においてCBT-Iは睡眠薬の1.82倍の効果を示し、「高確実性エビデンス」として評価されています。短期的には睡眠薬の即効性が勝る場合がありますが、薬をやめると戻りやすい睡眠薬に対し、CBT-Iは行動と考え方を変えるため効果が持続しやすい点が特徴です(Mitchell MD et al. 2012)。

CBT-Iの主な技法

技法 内容 主な効果
刺激制御法眠くなってからベッドに入る・眠れない時はベッドを出るベッドと「眠り」の連合を強化
睡眠制限法ベッドにいる時間を実際の睡眠時間に制限して睡眠圧を高める睡眠効率の向上
認知再構成「眠れなかったら明日は終わり」などの誤った信念を修正睡眠に対する不安の軽減
睡眠衛生指導光・カフェイン・体温・スマホ等の環境調整基本的な睡眠習慣の改善
出典:Furukawa Y et al. Components and delivery formats of cognitive behavioral therapy for chronic insomnia in adults: a systematic review and component network meta-analysis. JAMA Psychiatry. 2024;81(4):357-365.(認知再構成・睡眠制限・刺激制御が寛解に有効と示す)

今夜から試せる睡眠衛生——7つのポイント

1

起床時間を固定する(最重要)

就寝時間より「起床時間」を固定することが睡眠リズムの基本。眠れなかった翌日も同じ時間に起きることで睡眠圧が高まります。

2

午後のカフェインをやめる

カフェインの半減期は約5〜7時間。午後2時以降のコーヒー・エナジードリンク・緑茶は控えます。

3

就寝1〜2時間前にスマホをやめる

ブルーライトがメラトニン分泌を抑制します。またSNS・動画による精神的覚醒も入眠を妨げます。

4

眠くなってからベッドに入る

「眠くないのにとりあえず横になる」ことで、ベッドが「眠れない場所」として学習されます(刺激制御法)。

5

昼寝は15〜20分以内・午後3時前まで

長時間・遅い時間の昼寝は夜の睡眠圧を下げます。どうしても眠い場合は短めに。

6

就寝前の入浴は1〜2時間前に

体温が下がるタイミングで眠気が訪れます。就寝直前の入浴は体温上昇で覚醒を招くことも。

7

「眠れなくてもいい」と割り切る

「眠らなければ」という焦りが覚醒を引き起こします。眠れない時は横になって休んでいるだけで脳と体は休まります。

睡眠薬について:現在の第一選択薬(オレキシン受容体拮抗薬:スボレキサント/レンボレキサント)は依存性が低く、旧来のベンゾジアゼピン系より安全性が高いとされています(日本睡眠学会ガイドライン2024)。「薬を飲むのは負け」ではなく、症状に合わせて使い、CBT-Iと組み合わせることが効果的です。

眠れない夜が続いているなら、一度ご相談ください。

不眠の原因・タイプを評価した上で、
CBT-I・薬物療法・生活習慣改善を組み合わせた
治療を提案します。
平日朝7時〜診療。WEB予約24時間受付中。

WEB予約はこちら →

【出典・参考文献】

  1. 日本睡眠学会「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン(日本睡眠学会ガイドライン)」https://www.jssr.jp/
  2. 厚生労働省「2018年度国民健康・栄養調査結果の概要」(睡眠で十分な休養がとれていない者21.7%)
  3. PMDA「サスメドMed CBT-i 不眠障害用アプリ 適正使用指針」2024年3月(不眠障害有病率8.3%等)
  4. Furukawa Y, Sakata M, Furukawa TA, Efthimiou O, Perlis M. Initial treatment choices for long-term remission of chronic insomnia disorder in adults: a systematic review and network meta-analysis. Psychiatry Clin Neurosci. 2024;78(11):646-653. doi:10.1111/pcn.13730(CBT-I寛解率41% vs 薬物療法28%、OR 1.82)
  5. Furukawa Y, Sakata M, Yamamoto R, et al. Components and delivery formats of cognitive behavioral therapy for chronic insomnia in adults. JAMA Psychiatry. 2024;81(4):357-365. doi:10.1001/jamapsychiatry.2023.5060
  6. Mitchell MD, et al. Comparative effectiveness of cognitive behavioral therapy for insomnia: a systematic review. BMC Fam Pract. 2012;13:40. PMID: PMC3481424(長期的にCBT-Iが睡眠薬より効果的)
  7. Yan P, et al. Summary of the best evidence that cognitive behavioral therapy for insomnia improves sleep quality in patients with chronic insomnia. Front Psychiatry. 2026;16:1688561. doi:10.3389/fpsyt.2025.1688561
  8. 米国内科学会(ACP)ガイドライン:CBT-Iを慢性不眠に対する第一選択治療として推奨
⚠️ 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。睡眠薬の変更・中止は自己判断せず、必ず医師にご相談ください。
六本松こころのクリニック 六本松こころのクリニック
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