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コラム

ロングCOVIDとメンタルヘルス——ブレインフォグ・抑うつ・不安の長い影

ロングCOVIDとメンタルヘルス——ブレインフォグ・抑うつ・不安の長い影|六本松こころのクリニック
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ロングCOVID・メンタルヘルス|最新トピックス

ロングCOVIDとメンタルヘルス
ブレインフォグ・抑うつ・不安の「長い影」

「コロナのあと、なんだか頭も心も以前と違う」——その症状、気のせいではないかもしれません

🔬 JAMA / WHO / 米国学術研究院(NASEM 2024)に基づく
ここちゃん
記事監修
前田 輝 院長精神保健指定医・精神科専門医
「コロナにかかってから、頭がぼーっとして集中できない」
「あんなに元気だったのに、すぐ疲れて気分も落ち込む」
「内科では『異常なし』と言われたけれど、明らかに以前と違う」

そういうご相談が、当院にも増えています。ロングCOVID(コロナ後遺症)は、感染後の数か月〜数年にわたって続く多彩な症状を指し、メンタルヘルスへの影響も決して小さくありません。

この記事では、①ロングCOVIDとは何か、②抑うつ・不安・ブレインフォグはどのくらい起きているか、③なぜ起こるのか、④どう対処すればよいか——を、最新のエビデンスにもとづいて整理します。「気のせい」ではなく、適切なケアの対象であることを知っていただきたいと思います。

ロングCOVIDとは——「コロナのあとの長い不調」

ロングCOVID(Long COVID)は、新型コロナウイルス感染後に持続する多彩な症状の総称です。医学的には 「ポストコビッド・コンディション(Post-COVID-19 Condition)」 または 「PASC(Post-Acute Sequelae of SARS-CoV-2 infection、新型コロナウイルス感染後遺症)」 と呼ばれます。

WHO(世界保健機関)2021年定義

「新型コロナウイルス感染が確認された、または可能性のある既往のある人で、通常感染から3か月後までに発症し、少なくとも2か月間持続し、他の診断によって説明できない症状を呈する状態」

※ 米国学術研究院(NASEM)は2024年にこれをさらに整理し、「慢性的・全身性の疾患状態」としての位置づけを強調しています。

誰でもなり得る——軽症からも、ワクチン接種後でも

ロングCOVIDは、急性期が 軽症であっても、入院しなくても、ワクチン接種後でも発症することが報告されています。米国RECOVER研究(9,764名)では、感染者の約10〜30%が、感染6か月後にも何らかの後遺症状を抱えていることが示唆されました。

12の主要症状——RECOVER研究が示した「ロングCOVIDの輪郭」

米国NIHが主導するRECOVER研究(Thaweethai et al., JAMA 2023)は、9,764名のデータから、感染者と非感染者の差が大きい 12の主要症状を特定し、ロングCOVIDの定義に役立つスコアリングシステムを提示しました。

📊 ① ロングCOVIDの12のシグネチャー症状(RECOVER研究)
ロングCOVID 全身性症候群 🧠 神経・認知系 ① 労作後不快感(PEM) ② 慢性疲労 ③ ブレインフォグ(思考の霧) ④ めまい 👃 感覚系 ⑤ 嗅覚・味覚の異常 ⑥ 慢性咳嗽 💗 循環・運動系 ⑦ 動悸 ⑧ 胸痛 🍽️ 消化・代謝系 ⑨ 消化器症状 ⑩ 喉の渇き ⚡ その他 ⑪ 性機能・性欲の変化 ⑫ 異常な動き(不随意運動) これらの症状が複数組み合わさり、生活機能を著しく障害することが特徴
出典:Thaweethai T, Jolley SE, Karlson EW, et al. Development of a Definition of Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection. JAMA. 2023;329(22):1934-1946. RECOVER成人コホート研究(n=9,764)

メンタル症状はどのくらい起きているのか

ロングCOVID患者における精神症状の頻度を世界規模で集計した最新のメタ解析の結果を見てみましょう。

📊 ② ロングCOVIDにおける精神症状の有症率(メタ解析)
0% 10% 20% 30% 40% 50% 睡眠障害 45% 抑うつ 23% 不安 23% ブレインフォグ ~23% ロングCOVID患者のメンタル・認知症状の有症率(メタ解析の代表値)
出典:Seighali N, et al. BMC Psychiatry. 2024;24:105(143研究・約780万人)/van der Feltz-Cornelis CM, et al. Gen Hosp Psychiatry. 2024;88:10-22. ※研究により幅があり、研究地域・評価尺度・感染後経過月数により有症率は異なる。

ブレインフォグとは——「頭が霧で覆われた」感覚

ブレインフォグ(Brain Fog)は、ロングCOVIDで最も頻繁に訴えられる神経症状のひとつで、医学的には複数の認知機能低下を含む包括的な概念として用いられます。

ブレインフォグに含まれる症状

  • 注意・集中力の低下:仕事や読書に集中できない、すぐ疲れる
  • 言葉が出てこない:知っているはずの単語が思い出せない
  • 記憶の問題:短期記憶の困難、約束を忘れる
  • 処理速度の低下:会話や指示についていけない、判断に時間がかかる
  • 遂行機能の低下:段取りを組む・優先順位をつけることが難しい
  • 「思考の霧」感:頭がぼーっとして冴えない感覚

うつ病の認知症状との違い

ブレインフォグはうつ病の認知症状と一部重なりますが、典型的にはブレインフォグでは 気分の落ち込みより認知の困難が先に・より目立って現れる傾向があります。一方、長期に続けば二次的な抑うつを引き起こすため、両者の境界は実臨床では曖昧になりがちです。診療では両方を視野に入れた評価が大切です。

なぜ起こるのか——4つの仮説

ロングCOVIDの神経・精神症状のメカニズムは、まだ解明途上ですが、現時点で 4つの主要な仮説が提唱されています。これらは互いに排他的ではなく、複数の機序が同時に関与している可能性が高いと考えられています。

📊 ③ ロングCOVIDの神経・精神症状を引き起こす4つのメカニズム
ロングCOVIDの 神経・精神症状 ① 神経炎症 サイトカイン上昇・ ミクログリア活性化 ② 自己免疫 自己抗体産生・ 分子模倣 ③ 微小血管障害 脳血流低下・ 血管内皮機能不全 ④ ウイルス残存 スパイク蛋白の持続・ 腸管・神経系での残存
出典:Davis HE, McCorkell L, Vogel JM, Topol EJ. Long COVID: major findings, mechanisms and recommendations. Nat Rev Microbiol. 2023;21(3):133-146.

どう対処すればよいか——現時点でのエビデンス

ロングCOVIDに対する 「特効薬」は現時点で確立されていませんが、症状緩和とリハビリテーションを軸とした包括的アプローチが推奨されています。

1. ペーシング(Pacing)——「無理せず、休みすぎず」

労作後不快感(PEM: 動いた数時間〜数日後にぐったりする)がある場合、「やりすぎない・休みすぎない」というエネルギー管理が中心となります。1日のうちで活動量を分散させ、体調が良い日でも頑張りすぎないことが、長期的な回復に重要です。

2. 認知行動療法(CBT)と心理的サポート

抑うつ・不安・睡眠の問題に対しては、認知行動療法が一定のエビデンスを示しています。重要なのは、「すべて心の問題」と決めつけずに、身体症状と精神症状を並行してサポートすることです。

3. 段階的リハビリテーション(医師の指導下で)

REGAIN試験(BMJ 2024、英国・585名のRCT)では、オンライン上での段階的・個別化された運動・心理リハプログラムが、ロングCOVIDの生活機能改善に有効であることが示されました。ただしPEMがある場合の運動は慎重に行う必要があります。

4. 薬物療法——症状に応じた個別対応

抑うつ・不安に対するSSRI/SNRI、不眠に対する睡眠衛生指導や薬剤、頭痛・自律神経症状への対症療法など、症状ごとに既存の治療を組み合わせるのが現実的なアプローチです。「ロングCOVIDそのものを治す薬」はまだありません。

🌱 ご自身でできること(医学的に推奨されているもの)
  • 症状日記をつける(何をしたあとに悪化するかを把握する)
  • 睡眠を最優先する(7〜9時間・毎日同じ時刻に)
  • 無理な「頑張り直し」を避け、徐々に活動量を増やす
  • カフェイン・アルコールを控えめに(自律神経への影響)
  • 適切な水分・電解質摂取(POTS対策にも)
  • 1人で抱え込まず、職場・家族・医療機関に伝える
⚠️ ご注意:ロングCOVIDは「気の持ちよう」では治りません。一方で「特定のサプリで完治する」「高額な自由診療治療しか効かない」という宣伝にも注意が必要です。確立されていないものに過度な期待や費用をかける前に、まずは保険診療内でできる包括的アプローチをご相談ください。

よくあるご質問

心療内科を受診すべきか、内科を受診すべきか迷います。
両方並行が理想です。まず内科で、貧血・甲状腺機能・心電図など 身体疾患の除外を行ったうえで、抑うつ・不安・ブレインフォグなどの精神・認知症状が続く場合は心療内科・精神科へ。当院では、内科の検査結果を踏まえた上で精神症状に対するサポートを行います。
ブレインフォグは認知症の始まりですか?
ロングCOVIDのブレインフォグは 認知症とは別の現象と考えられています。多くの場合は感染後数か月〜数年で改善します。ただし高齢者・既存の認知機能低下がある方では慎重な評価が必要です。心配な場合は神経心理検査などで評価することができます。
仕事を休んだほうがいいですか?
症状の重さによります。軽症で短時間勤務や在宅勤務で対応できる方もいれば、一度しっかり休養を取って体力を回復させたほうが結果的に早く社会復帰できる方もいます。「無理して悪化→長期化」は最も避けたいパターン。当院では症状・お仕事内容を聞き取り、必要に応じて診断書・休職/復職計画のご相談に応じます。
ワクチンや感染回数で違いますか?
研究では、ワクチン接種者のほうがロングCOVID発症率は やや低い傾向が示されていますが、ゼロにはなりません。感染を繰り返すことでロングCOVID発症リスクが累積する可能性も指摘されています。これは予防の観点でも重要なメッセージです。

「コロナのあと、以前の自分と違う」という方へ

当院では、ロングCOVIDに伴う抑うつ・不安・睡眠障害・認知症状について、
診察と必要な治療(薬物療法・心理的サポート・診断書・休職相談など)を
提供しています。「気のせい」と片付けずに、まずはご相談ください。

WEB予約はこちら 📞 092-401-4556

📚 参考文献

  1. Thaweethai T, Jolley SE, Karlson EW, et al. Development of a Definition of Postacute Sequelae of SARS-CoV-2 Infection. JAMA. 2023;329(22):1934-1946. doi:10.1001/jama.2023.8823
  2. National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine. A Long COVID Definition: A Chronic, Systemic Disease State with Profound Consequences. Washington, DC: The National Academies Press; 2024. doi:10.17226/27768
  3. Seighali N, Abdollahi A, Shafiee A, et al. The global prevalence of depression, anxiety, and sleep disorder among patients coping with Post COVID-19 syndrome (long COVID): a systematic review and meta-analysis. BMC Psychiatry. 2024;24:105. doi:10.1186/s12888-023-05481-6
  4. van der Feltz-Cornelis CM, Turk F, Sweetman J, et al. Prevalence of mental health conditions and brain fog in people with long COVID: A systematic review and meta-analysis. Gen Hosp Psychiatry. 2024;88:10-22. doi:10.1016/j.genhosppsych.2024.02.009
  5. Bidhendi-Yarandi R, Biglarian A, et al. Prevalence of depression, anxiety, stress, and suicide tendency among individual with long-COVID and determinants: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2025;20(1):e0312351. doi:10.1371/journal.pone.0312351
  6. Davis HE, McCorkell L, Vogel JM, Topol EJ. Long COVID: major findings, mechanisms and recommendations. Nat Rev Microbiol. 2023;21(3):133-146.
  7. McGregor G, Sandhu H, Bruce J, et al. Clinical effectiveness of an online supervised group physical and mental health rehabilitation programme for adults with post-covid-19 condition (REGAIN study). BMJ. 2024;384:e076506. doi:10.1136/bmj-2023-076506
  8. Zeraatkar D, Ling M, Kirsh S, et al. Interventions for the management of long covid (post-covid condition): living systematic review. BMJ. 2024;387:e081318.
  9. World Health Organization. A clinical case definition of post COVID-19 condition by a Delphi consensus, 6 October 2021.
⚠️ 本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。ロングCOVIDの診断・治療は個別性が高く、必ず医師の診察を受けてください。
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