ストレスチェック義務化
50人未満の全事業場が対象に——2028年までに何が変わるか
改正労働安全衛生法(2025年5月公布)で、すべての職場のメンタルヘルス対策が必須に
ストレスチェック制度とは——おさらい
ストレスチェック制度は、2015年12月施行の改正労働安全衛生法により導入された、職場における労働者のメンタルヘルス対策の中核となる制度です。
📋 制度の基本(労働安全衛生法第66条の10)
- 目的
- 労働者のメンタルヘルス不調の 未然防止(一次予防)
- 方法
- 年1回、心理的負担の程度を把握する検査
- 標準ツール
- 職業性ストレス簡易調査票(57項目版)または新職業性ストレス簡易調査票(80項目版)
- 実施者
- 医師・保健師・厚労省指定研修を修了した看護師・精神保健福祉士・歯科医師・公認心理師
- 結果通知
- 本人にのみ直接通知(会社には本人同意なく開示禁止)
- 高ストレス者
- 本人申出により 医師による面接指導を実施
- 個人情報保護
- 事業者は本人同意なしに結果を入手できない
- 集団分析
- 個人を特定しない形で集団傾向を分析・職場改善に活用(努力義務)
2025年法改正で何が変わるか——タイムライン
改正のポイント(労働安全衛生法 改正部分)
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律 第2条より:
「ストレスチェックについて、現在当分の間努力義務となっている 労働者数50人未満の事業場についても実施を義務とする。その際、50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する。」
なぜ今、義務化拡大が必要なのか
50人未満の事業場(中小零細企業)への義務化拡大が決まった背景には、実施率の格差と 精神障害による労災認定の増加があります。
精神障害による労災認定件数も過去最多
厚生労働省の発表によれば、精神障害による労災認定件数は 令和6年度で1,055件と過去最多を記録しています。長時間労働・パワハラ・業務量増加などを背景に、職場でのメンタル不調が深刻な社会問題となっています。「メンタル不調を未然に防ぐ重要性は、事業場の規模にかかわらない」——これが今回の義務化拡大の根本的な考え方です。
ストレスチェック実施の流れ(5ステップ)
罰則はあるのか
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| ストレスチェック自体の未実施 | 直接的な罰則は 規定されていない(今回の改正後も同様) |
| 労基署への報告書未提出(50人以上の事業場) | 労安法第120条により 50万円以下の罰金 |
| 面接指導の未実施 | 直接の罰則はないが、安全配慮義務違反として民事責任を問われ得る |
| 個人情報の不適切取り扱い | 個人情報保護法等で罰則対象 |
⚠️ 罰則がなくても「安全配慮義務」がある
ストレスチェック未実施に対する直接の罰金はないものの、労働契約法第5条の「安全配慮義務」は事業者に課せられています。メンタル不調による休職・退職・労災・損害賠償請求などに発展すれば、「ストレスチェックを実施していなかった」事実が事業者の不利に働く可能性があります。罰則の有無ではなく、「労働者を守る義務」として実施すべきです。
50人未満の事業場が「今」やるべきこと
施行までの猶予期間(最長2028年5月まで)は 準備のための時間です。直前で慌てないために、今から段階的に取り組むことをおすすめします。
1. 厚労省マニュアルを入手する(無料)
厚生労働省が 2026年2月25日に公開した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を必ず入手してください。50人以上向けマニュアルとは別に、小規模事業場の実情に配慮した内容になっています。
2. 実施体制を検討する
- 自社で実施するか、外部委託するかを検討
- 産業医がいない場合は、地域産業保健センターの活用を検討
- 実施者(医師・保健師等)の確保
- 面接指導医師の確保(事前に候補医師との連携を確認)
3. 厚労省の無料ツールを試す
厚労省は 「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を無料で提供しています。職業性ストレス簡易調査票(57項目)に基づいた標準ツールで、自社でストレスチェックを実施する場合に活用できます。
4. 集団分析と職場改善の準備
ストレスチェックは「やったら終わり」ではありません。結果を集団分析し、職場環境の改善につなげることで、初めて意味のある取り組みになります。集団分析の対象人数が少ない場合(10人未満等)は、プライバシー保護の観点から実施方法に工夫が必要です。
働く方ご本人へ——高ストレス判定が出たら
「高ストレス」と判定されたら、どうすればよいか
高ストレス判定は、「現在のストレスが高い状態にある」というサインです。「うつ病」「精神疾患」と診断されたわけではありませんが、放置すれば本格的なメンタル不調に進む可能性があります。
- 医師面接指導を申し出る:結果通知に同封の申出書を使用
- 会社の産業医・保健師に相談する:業務調整の検討
- 外部の心療内科・精神科を受診する:会社に知られず相談したい場合
- 生活習慣を見直す:睡眠・食事・運動・SNS使用時間
「会社にバレないか」が心配な方へ
ストレスチェックの結果は、本人の同意なく会社(事業者)に開示することは禁止されています。健康診断とは取り扱いが異なる点に注意が必要です。「ストレスチェックで医師面接を受けた」事実だけは事業者に知られますが(面接を受けるための申し出が必要なため)、その内容や診断は本人の同意なく開示されません。
どうしても会社経由で動きたくない方は、外部の心療内科・精神科に直接受診することができます。これは健康保険適用で受診できる通常の医療行為であり、会社への連絡は一切ありません。
よくあるご質問
「高ストレス判定」「ストレスチェック後の相談先」をお探しの方へ
当院では、ストレスチェック制度に関連した労働者の方の受診、
企業からの面接指導依頼にも対応しています。
「会社の産業医経由ではなく、外部の心療内科で相談したい」
「診断書や就業上の意見書が必要」という方もお気軽にどうぞ。
平日朝7時から診療、出勤前のご相談も可能です。
📚 参考文献・出典
- 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第26号)2025年5月14日公布
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」
- 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(令和3年2月改訂)
- 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(令和8年2月公開)
- 厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」
- 厚生労働省「令和6年度精神障害に関する事案の労災補償状況」
- 厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」
- 労働安全衛生法 第66条の10(ストレスチェック)、第120条(罰則)
- 労働契約法 第5条(安全配慮義務)
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