双極性障害II型
「軽躁」を見逃さない
うつ病と間違われやすい“気分の波”。本人も気づきにくい「軽躁」を知ることが、回復への近道になります。
「うつの治療をしているのに、なかなか良くならない」。その背景に、双極性障害が隠れていることがあります。カギは“調子のいい時期=軽躁”。本人が気づきにくいからこそ、正しく知ることが大切です。
「うつの治療を続けているのに、なかなか良くならない」——その背景に、双極性障害II型が隠れていることがあります。カギを握るのが「軽躁(けいそう)」。本人が“ただ調子のいい時期”と感じてしまい、見逃されやすいこの状態を知ることが、正しい治療への第一歩です。
双極性障害とは
「気分の波」を繰り返す病気
双極性障害(そううつ病)は、気分が高まる時期と、落ち込む時期を繰り返す病気です。波の大きさによって、大きく2つに分けられます。
- 双極性障害I型:はっきりした「躁(そう)」の時期がある(活動が極端になり、生活が大きく乱れる・入院が必要になることも)
- 双極性障害II型:「躁」までいかない、軽い高まり=「軽躁」と、強い「うつ」を繰り返す
大切なのは、双極性障害は、いわゆる「うつ病(単極性うつ病)」とは別の病気だということ。見た目の落ち込みは似ていても、治療の考え方が異なります。
「軽躁」ってどんな状態?
軽躁とは、いつもの自分とは明らかに違って、4日以上ほぼ一日中、気分が高まったり(または妙にイライラしたり)、活動・エネルギーが高まる状態です。具体的には、こんなサインが現れます。
ポイントは、軽躁では生活が大きく破綻したり、入院が必要になったりするほどではないこと。ここまで激しくなると「躁」=双極性障害I型になります。だからこそ軽躁は、本人にとって「とても調子がいい時期」「絶好調」に感じられ、問題だと気づかれにくいのです。
なぜうつ病と誤診されるのか
双極性障害II型が、うつ病と間違われやすいのには、はっきりした理由があります。
- 受診するのは、たいてい「うつ」のとき:軽躁のときは元気なので、病院には来ない。
- 軽躁を本人が問題と思わない:むしろ「調子がいい」と感じ、医師に話さない。
- 記憶に残りにくい:過去の軽躁を、本人が「そういう時期もあった」程度にしか覚えていない。
軽躁は、本人より周りのほうが気づいていることがよくあります。「あの時期、やけにテンションが高くて、寝ないで動き回っていた」——そんなご家族の視点が、正しい診断の大きな助けになります。受診に付き添っていただけると、とても参考になります。
見分けが大切な理由
「治療が違う」から
うつ病と双極性障害を見分けることが重要なのは、治療の方針が異なるからです。とくに注意したいのが、双極性障害の人に抗うつ薬を“単独で”使うと、かえって不安定になることがある点です。
だからこそ、「うつ」として治療を始めても、良くならない・かえってイライラや不眠が強まる・気分の波が出るといったときは、双極性の可能性を含めて、診断を見直すことが大切になります。リチウムなどの気分安定薬には、長期的に気分を安定させ、自殺のリスクを下げる効果も報告されています。
受診のときに伝えてほしいこと
正しい診断は、医師が時間をかけて総合的に行います。その手がかりとして、次のような点に心当たりがあれば、診察でぜひお話しください(ご家族から見た様子も大歓迎です)。
正しい診断が、回復を支える
双極性障害は、I型・II型ともに、適切に治療すれば気分の波をコントロールし、安定した生活を取り戻せる病気です。一方で、見過ごされたまま不安定な状態が続くと、生活への影響が大きくなりやすいことも知られています。
とくに、双極性障害は気分の落ち込みが深くなることがあり、つらさが極まる前に、適切な診断と治療につながることがとても大切です。「II型だから軽い」というわけではありません。だからこそ、「ただのうつ」と決めつけず、気分の波に目を向けることに、大きな意味があります。
当院での向き合い方
当院では、うつ症状でいらした方にも、過去の「気分の高まり」や、気分の波のパターンをていねいにうかがい、双極性の可能性も含めて診させていただきます。ご本人が気づきにくい部分もあるため、ご家族からの情報も大切にし、必要なら受診への付き添いも歓迎します。
治療方針は、効果や副作用、生活への影響を共有しながら、一緒に決めていきます。当院は平日朝7時から診療しており、働きながら通院される方にも続けやすい環境です。「うつの治療をしているのに良くならない」——そんなときも、どうぞご相談ください。
よくあるご質問
Q「調子がいい」のは、悪いことなのですか?
QII型は、I型より軽いということですか?
Q今、抗うつ薬を飲んでいます。やめるべきですか?
Q診断はどうやって決まるのですか?
Q治療すれば、ふつうに生活できますか?
Q家族が当てはまる気がします。どうすれば?
「良くならないうつ」、見直してみませんか。
気分の波について、ていねいにお話をうかがいます。ご家族のご相談も歓迎です。
参考文献
- American Psychiatric Association. DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(双極性障害・軽躁病/躁病エピソードの診断基準). 2013(日本精神神経学会 監訳).
- 日本うつ病学会. 双極性障害(双極症)治療ガイドライン. https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/
本記事は、一般的な情報提供を目的として、診断基準・医学会のガイドラインをもとに作成したものです。診断は医師が個別に総合的に行うもので、本記事のチェック項目は自己診断を目的としたものではありません。お薬の開始・中止・変更は、自己判断せず必ず主治医にご相談ください。これは心の健康に関わるテーマです。おつらい気持ちがある場合は、医療機関や相談窓口にご相談ください。
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