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コラム

双極性障害II型「軽躁」を見逃さない

双極性障害II型|「軽躁」を見逃さない・うつ病との違い|六本松こころのクリニック
最新トピックス / こころの病気を知る

双極性障害II型
「軽躁」を見逃さない

うつ病と間違われやすい“気分の波”。本人も気づきにくい「軽躁」を知ることが、回復への近道になります。

軽躁=4日以上
うつ病と誤診されやすい
治療が異なる要注意
監修
院長 前田 輝 精神保健指定医/日本専門医機構認定 精神科専門医

「うつの治療をしているのに、なかなか良くならない」。その背景に、双極性障害が隠れていることがあります。カギは“調子のいい時期=軽躁”。本人が気づきにくいからこそ、正しく知ることが大切です。

「うつの治療を続けているのに、なかなか良くならない」——その背景に、双極性障害II型が隠れていることがあります。カギを握るのが「軽躁(けいそう)」。本人が“ただ調子のいい時期”と感じてしまい、見逃されやすいこの状態を知ることが、正しい治療への第一歩です。

1WHAT IS IT

双極性障害とは
「気分の波」を繰り返す病気

双極性障害(そううつ病)は、気分が高まる時期と、落ち込む時期を繰り返す病気です。波の大きさによって、大きく2つに分けられます。

  • 双極性障害I型:はっきりした「躁(そう)」の時期がある(活動が極端になり、生活が大きく乱れる・入院が必要になることも)
  • 双極性障害II型:「躁」までいかない、軽い高まり=「軽躁」と、強い「うつ」を繰り返す

大切なのは、双極性障害は、いわゆる「うつ病(単極性うつ病)」とは別の病気だということ。見た目の落ち込みは似ていても、治療の考え方が異なります。

「気分の波」の違い ▲上=気分が高い ▼下=気分が低い うつ病 (単極性) 落ち込み(うつ)だけを繰り返す 双極II型 軽躁 うつ 軽い高まり(軽躁)と、強いうつ 双極I型 躁(強い高まり)
双極II型は、「軽い高まり(軽躁)」があるのが、うつ病との大きな違いです。出典:DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル)の概念をもとに作図
2HYPOMANIA

「軽躁」ってどんな状態?

軽躁とは、いつもの自分とは明らかに違って、4日以上ほぼ一日中、気分が高まったり(または妙にイライラしたり)、活動・エネルギーが高まる状態です。具体的には、こんなサインが現れます。

😴
睡眠欲求の減少:あまり寝なくても平気で活動できる
💬
多弁:いつもよりよくしゃべる・止まらない
💡
アイデアが次々:考えがどんどん湧く・飛ぶ
活動的・自信過剰:何でもできる気がする
🌀
注意散漫:気が散って一つに集中しづらい
💸
後で困る行動:浪費・無謀な決断・羽目を外す

ポイントは、軽躁では生活が大きく破綻したり、入院が必要になったりするほどではないこと。ここまで激しくなると「躁」=双極性障害I型になります。だからこそ軽躁は、本人にとって「とても調子がいい時期」「絶好調」に感じられ、問題だと気づかれにくいのです。

3WHY MISSED

なぜうつ病と誤診されるのか

双極性障害II型が、うつ病と間違われやすいのには、はっきりした理由があります。

  • 受診するのは、たいてい「うつ」のとき:軽躁のときは元気なので、病院には来ない。
  • 軽躁を本人が問題と思わない:むしろ「調子がいい」と感じ、医師に話さない。
  • 記憶に残りにくい:過去の軽躁を、本人が「そういう時期もあった」程度にしか覚えていない。
👨‍👩‍👧 ご家族・周囲の情報がカギ

軽躁は、本人より周りのほうが気づいていることがよくあります。「あの時期、やけにテンションが高くて、寝ないで動き回っていた」——そんなご家族の視点が、正しい診断の大きな助けになります。受診に付き添っていただけると、とても参考になります。

4WHY IT MATTERS

見分けが大切な理由
「治療が違う」から

うつ病と双極性障害を見分けることが重要なのは、治療の方針が異なるからです。とくに注意したいのが、双極性障害の人に抗うつ薬を“単独で”使うと、かえって不安定になることがある点です。

治療の考え方の違い うつ病(単極性) 抗うつ薬が治療の中心 休養・精神療法と組み合わせ、 症状の改善をめざす 双極性障害 気分安定薬が基本 リチウム・ラモトリギン など/ 一部の抗精神病薬(クエチアピン等) ⚠ 抗うつ薬の“単独使用”は 気分を不安定にすることがあり慎重に
双極性障害では、気分安定薬などが治療の柱になります。うつ病と同じ感覚で抗うつ薬だけを使うと、躁・軽躁へ転じたり、波が不安定になったりすることがあります。出典:日本うつ病学会 双極性障害治療ガイドラインをもとに作図

だからこそ、「うつ」として治療を始めても、良くならない・かえってイライラや不眠が強まる・気分の波が出るといったときは、双極性の可能性を含めて、診断を見直すことが大切になります。リチウムなどの気分安定薬には、長期的に気分を安定させ、自殺のリスクを下げる効果も報告されています。

5CHECK

受診のときに伝えてほしいこと

正しい診断は、医師が時間をかけて総合的に行います。その手がかりとして、次のような点に心当たりがあれば、診察でぜひお話しください(ご家族から見た様子も大歓迎です)。

気分の波 セルフチェック(医師に伝える材料に)
⚠ これは「自己診断」のためのものではありません。当てはまっても双極性障害とは限りませんし、当てはまらなくても可能性はあります。あくまで医師に伝える“材料”として活用してください。
6IMPORTANT

正しい診断が、回復を支える

双極性障害は、I型・II型ともに、適切に治療すれば気分の波をコントロールし、安定した生活を取り戻せる病気です。一方で、見過ごされたまま不安定な状態が続くと、生活への影響が大きくなりやすいことも知られています。

とくに、双極性障害は気分の落ち込みが深くなることがあり、つらさが極まる前に、適切な診断と治療につながることがとても大切です。「II型だから軽い」というわけではありません。だからこそ、「ただのうつ」と決めつけず、気分の波に目を向けることに、大きな意味があります。

7AT OUR CLINIC

当院での向き合い方

当院では、うつ症状でいらした方にも、過去の「気分の高まり」や、気分の波のパターンをていねいにうかがい、双極性の可能性も含めて診させていただきます。ご本人が気づきにくい部分もあるため、ご家族からの情報も大切にし、必要なら受診への付き添いも歓迎します。

治療方針は、効果や副作用、生活への影響を共有しながら、一緒に決めていきます。当院は平日朝7時から診療しており、働きながら通院される方にも続けやすい環境です。「うつの治療をしているのに良くならない」——そんなときも、どうぞご相談ください。

?FAQ

よくあるご質問

Q「調子がいい」のは、悪いことなのですか?
調子がいいこと自体が悪いわけではありません。ただ、いつもの自分と明らかに違う高まりが数日以上続き、睡眠が減ったり、後で困る行動につながったりする場合は、軽躁の可能性があります。「良い時期」と「軽躁」の線引きは難しいので、気になる波があれば、医師にご相談ください。
QII型は、I型より軽いということですか?
「軽い」とは限りません。II型は「躁」が軽い(軽躁)という意味で、うつの深さや生活への影響は決して小さくありません。むしろ、うつの期間が長く、つらさが強く出ることもあります。型に関わらず、適切な診断と治療が大切です。
Q今、抗うつ薬を飲んでいます。やめるべきですか?
自己判断で中止しないでください。双極性障害でも、状況によって抗うつ薬を使うことはあり、急な中止は別のリスクを伴います。「双極性かもしれない」と感じたら、まず主治医に、気分の波や効きにくさを伝えてご相談を。診断と治療の見直しは、医師と一緒に進めるのが安全です。
Q診断はどうやって決まるのですか?
血液検査などで一発でわかるものではなく、これまでの気分の波の経過を、時間をかけてていねいにうかがって総合的に判断します。過去の軽躁は本人が気づきにくいため、ご家族からの情報がとても役立ちます。一度の診察で確定しないこともあり、経過を見ながら見極めていくこともあります。
Q治療すれば、ふつうに生活できますか?
はい。適切な治療で気分の波を抑え、安定した生活を続けている方は大勢いらっしゃいます。気分安定薬を中心に、規則正しい生活や、波のサインに早く気づく工夫を組み合わせます。仕事や学業を続けながら治療することも十分可能です。
Q家族が当てはまる気がします。どうすれば?
ご本人が気づきにくい病気なので、ご家族の気づきはとても大切です。責めるのではなく、「最近、気分の波があるみたいで心配」とやわらかく伝え、受診を後押ししてあげてください。ご家族だけでのご相談も承ります。受診に付き添っていただけると、診断の助けになります。

「良くならないうつ」、見直してみませんか。

気分の波について、ていねいにお話をうかがいます。ご家族のご相談も歓迎です。

平日 朝7時〜 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分 / 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F
つらい気持ちが強いとき 気分の落ち込みが深く、「消えてしまいたい」と感じるほどつらいときは、どうかひとりで抱え込まないでください。適切な診断と治療で、その波はやわらげられます。信頼できる人や、私たちのような医療機関に、声をかけてください。

参考文献

  1. American Psychiatric Association. DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(双極性障害・軽躁病/躁病エピソードの診断基準). 2013(日本精神神経学会 監訳).
  2. 日本うつ病学会. 双極性障害(双極症)治療ガイドライン. https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/

本記事は、一般的な情報提供を目的として、診断基準・医学会のガイドラインをもとに作成したものです。診断は医師が個別に総合的に行うもので、本記事のチェック項目は自己診断を目的としたものではありません。お薬の開始・中止・変更は、自己判断せず必ず主治医にご相談ください。これは心の健康に関わるテーマです。おつらい気持ちがある場合は、医療機関や相談窓口にご相談ください。

六本松こころのクリニック
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TEL:092-401-4556 / WEB予約はこちら
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