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抗精神病薬と体重増加 ―「意志の問題」ではありません。統合失調症の体重管理を考える

抗精神病薬と体重増加 ―「意志の問題」ではありません。統合失調症の体重管理を考える|六本松こころのクリニック
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抗精神病薬と体重増加
「意志の問題」ではありません
統合失調症の体重管理を考える

「薬を飲み始めてから体重が増えた」「自分の意志が弱いからだろうか」――そう感じている方へ。抗精神病薬による体重増加はよく知られた副作用で、あなたのせいではありません。なぜ起こるのか、どう向き合えばよいのかを、精神科専門医がやさしくお伝えします。

🧬 あなたのせいではない 📈 早めの気づきが大切 🤝 対処法があります
監修:前田 輝六本松こころのクリニック 院長)/精神保健指定医・日本専門医機構認定 精神科専門医。「今できることをする」「患者さんの生活ごと支える」を大切にしています。
01はじめに

体重が増えたのは、あなたのせいではありません

統合失調症の治療を続けるなかで、「体重が増えてしまった」と悩む方は少なくありません。見た目のことで自信をなくしたり、「意志が弱いからだ」と自分を責めてしまったり。なかには、そのつらさからお薬をやめたくなる方もいらっしゃいます。

まずお伝えしたいのは、抗精神病薬と体重増加の関係はよく知られた副作用であり、あなたの意志の弱さのせいではないということです。体の仕組みに起きている変化であり、自分を責める必要はまったくありません。そして、対処する方法もあります。この記事では、なぜ起こるのか、どう向き合えばよいのかを一緒に整理していきます。

⚠️ 最初に大切なこと:自己判断で薬をやめないでください 体重が気になっても、自己判断でお薬をやめたり減らしたりするのは避けてください。再発のリスクが高まり、かえって回復から遠ざかってしまいます。体重の悩みは、やめる理由ではなく、相談する理由です。主治医に伝えれば、一緒にできることがあります。
02どれくらい多い?

悩んでいるのは、あなただけではありません

研究では、統合失調症などの重い精神疾患のある方で、肥満は一般の方のおよそ3倍多いことが報告されています。43カ国・120の研究をまとめた解析では、肥満のある方が約26%、太り気味も含めるとおよそ60%にのぼりました。つまりこれは、とてもよくある悩みなのです。

また、体重の変化は治療が長くなるほど起こりやすい傾向があります。2026年に発表された解析では、治療開始から3年で約20%、5年で約37%の方に肥満がみられたと報告されています。早い段階から少しずつ気をつけていくことが大切だとわかります。

図1:時間が経つほど、変化は起こりやすくなる
治療開始から3年 約20% 治療開始から5年 約37% ※統合失調症の患者さんにおける肥満の割合(メタ解析、2026年)
だからこそ、体重を「時々ふり返る」習慣が助けになります。増えてから慌てるより、早めの気づきが対処しやすさにつながります。
03なぜ起こる?

原因はひとつではありません

体重が増える背景には、いくつもの要素が重なっています。ひとつはお薬の作用です。抗精神病薬のなかには、食欲に関わる脳の仕組みに影響し、食欲が増したり、糖や脂質の代謝が変わったりするものがあります。しかも、その影響の大きさは薬によってかなり違います

もうひとつは病気そのものや生活の状況です。意欲の低下から活動量が減ったり、外出や運動の機会が少なくなったりします。実は、お薬を飲んでいない方でも代謝の問題は一般の方より多いことが知られており、「薬だけが原因」ではないこともわかっています。つまり、誰かのせいでも、あなたの努力不足でもないのです。

図2:体重の変化に関わる、いくつもの要素
お薬の作用 食欲・代謝に影響 活動量の低下 意欲の低下など 病気自体の要因 未服薬でも多い 生活の状況 環境・経済的な事情
これらが重なって起こることなので、「自分の意志が弱いから」ではありません。だからこそ、一人で頑張るのではなく、一緒に対処していきます。
04できること

対処法はあります ― まず主治医に相談を

大切なのは、気づいたら早めに主治医に伝えることです。医師は状況に応じて、いくつもの方法を一緒に考えることができます。たとえば、お薬の見直し。代謝への影響は薬によって異なるため、症状の安定を保ちながら、体重への影響が比較的少ない薬に変えられる場合があります(もちろん、症状とのバランスを慎重に見ながらです)。

また、体重増加に対してお薬で対処する方法もあります。海外のガイドラインでは、抗精神病薬による体重増加への対策としてメトホルミンという薬の使用が推奨されています。近年注目されるGLP-1受容体作動薬についても研究が進んでいますが、これらは必ず医師の判断のもとで用いるもので、自己判断での使用や個人輸入は危険です。

加えて、定期的に体重や血液検査で見守っていくこと(モニタリング)が、早めの対処につながります。無理なく続けられる範囲で体を動かしたり、食生活を整えたりする工夫も助けになりますが、厳しい制限や急激な減量は必要ありません。あなたのペースで、できることから一緒に始めましょう。

図3:気になったときの流れ
体重が気になる 自己判断でやめない 主治医に伝える 早めがラクです 一緒に対処 薬の見直し/お薬での対策 定期的な見守り
「合わないからやめる」ではなく「合うように調整する」。体重の悩みは、治療をよりよくするためのサインです。
05当院の考え方

こころも、からだも、一緒に診ていきます

統合失調症の治療では、症状の安定だけでなくからだの健康も同じくらい大切だと考えています。体重や代謝の変化は、放っておくと生活習慣病につながることもあるため、こころとからだの両方に目を配りながら、無理のない形で治療を続けていくことを大切にしています。薬の選び方については、統合失調症の薬物治療に関する記事もあわせてご覧ください。

体重のことは、なかなか言い出しにくいかもしれません。でも、それは決して「わがまま」でも「甘え」でもありません。気になっているなら、それは立派な相談の理由です。どうか遠慮なく、そのままの気持ちをお聞かせください。あなたのペースに合わせて、一緒に考えていきます。

?よくあるご質問

抗精神病薬と体重増加についてのQ&A

薬を飲み始めてから太りました。自分の意志が弱いのでしょうか?
いいえ、違います。抗精神病薬による体重増加はよく知られた副作用で、食欲に関わる脳の仕組みや代謝への影響によって起こります。意志の強さの問題ではありません。加えて、意欲の低下による活動量の減少など、いくつもの要素が重なって起こります。自分を責める必要はまったくありません。
体重が増えたので、薬をやめてもいいですか?
自己判断でやめるのは避けてください。再発のリスクが高まり、かえって回復から遠ざかってしまいます。体重の悩みは「やめる理由」ではなく「相談する理由」です。主治医に伝えれば、薬の見直しや他の対処法を一緒に考えられます。まずはご相談ください。
体重が増えにくい薬に変えることはできますか?
可能な場合があります。代謝への影響は薬によってかなり異なるため、症状の安定を保てるかを慎重に見ながら、変更を検討できることがあります。ただし、変更にはメリットとリスクの両方があり、その方の状態によって適否が変わります。主治医とよく相談して決めていきましょう。
体重増加に対して、お薬で対処する方法はありますか?
あります。海外のガイドラインでは、抗精神病薬による体重増加への対策としてメトホルミンという薬の使用が推奨されています。GLP-1受容体作動薬についても研究が進んでいます。ただし、これらは必ず医師の判断と管理のもとで用いるものです。自己判断での使用や個人輸入は危険ですので、必ず主治医にご相談ください。
生活のなかで、気をつけられることはありますか?
無理のない範囲で体を動かすこと、食生活を整えることは助けになります。ただし、厳しい食事制限や急激な減量は必要ありませんし、おすすめもしません。大切なのは「続けられること」です。何から始めればよいか迷うときは、診察のなかで一緒に考えていきましょう。
体重や体のことは、定期的に調べたほうがいいですか?
はい、定期的に体重や血液検査で見守っていくこと(モニタリング)は、変化に早く気づき、早めに対処するために役立ちます。統合失調症の治療では、こころの症状だけでなく、からだの健康も同じくらい大切です。気になることがあれば、遠慮なく主治医にお伝えください。

言い出しにくいことこそ、聞かせてください

体重の悩みは、立派な相談の理由です。
平日朝7時から、お仕事や学校の前に受診いただけます。

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六本松こころのクリニック(心療内科・精神科)
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F / 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分
TEL 092-401-4556 / 平日 朝7時〜

主な参考文献(一次情報)

  1. Long J, Yang B, Zheng Q. A meta-analysis of the incidence proportion of obesity and associated risk factors in patients with schizophrenia. Frontiers in Psychiatry. 2026;17:1818904.
  2. Afzal M, et al. Prevalence of Overweight and Obesity in People With Severe Mental Illness: Systematic Review and Meta-Analysis. Frontiers in Endocrinology. 2021.(43カ国・120研究)
  3. Pillinger T, et al. Comparative effects of 18 antipsychotics on metabolic function in patients with schizophrenia: systematic review and network meta-analysis. The Lancet Psychiatry. 2020.
  4. Metformin for the Prevention of Antipsychotic-Induced Weight Gain: Guideline Development and Consensus Validation. Schizophrenia Bulletin. 2025.
  5. Mitchell AJ, et al. Prevalence of metabolic syndrome and metabolic abnormalities in schizophrenia and related disorders. Schizophrenia Bulletin. 2013.(未服薬でも代謝異常が多い)

ご注意

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。体重の変化やその対処法は、病状・体質・生活状況によって一人ひとり異なります。お薬の種類・量の変更や中止は、必ず主治医の指示のもとで行ってください。自己判断での中止・減量は再発のリスクを高めます。また、体重に関するお薬(メトホルミンやGLP-1受容体作動薬など)は医師の管理のもとで用いるものであり、自己判断での使用や個人輸入は健康被害のおそれがあります。体重や体調について不安があるときは、主治医または医療機関にご相談ください。

六本松こころのクリニック
心療内科・精神科/院長 前田 輝(精神保健指定医・精神科専門医)
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