アカシジアとむずむず脚の見分け方——「じっとしていられない」2つの正体
座っていられない、脚を動かさずにいられない、夜になると眠れない。よく似たこの訴えの裏には、薬の副作用である「アカシジア」と、脚の病気である「むずむず脚症候群」という、まったく別の2つの状態が隠れていることがあります。原因がちがえば、対処もちがいます。見分けるポイントと、研究で分かっていること・まだ分かっていないことを整理します。
前田 輝(まえだ あきら) 院長
精神保健指定医/日本専門医機構認定 精神科専門医
複数の精神科病院・クリニックでの勤務を経て、2026年4月に福岡市中央区六本松で開業。平日朝7時からの診療を行っています。
アカシジアとむずむず脚は、どちらも「じっとしていられない」という訴えで始まることが多く、医師にとっても見分けがむずかしい組み合わせです。国際的な診断基準でも、むずむず脚と診断する前に、アカシジアなど「よく似た別の状態」ではないことを確かめるよう求めています[1]。取り違えると、必要のない薬が増えたり、本当の原因である薬がそのまま続いたりしかねません。
1. 「じっとしていられない」には代表的な2つの原因がある
アカシジアは、主に心の病気に使う薬の副作用として起こる「内側からの落ち着かなさ」です。体の中がそわそわして、座っていられず、立ったり歩き回ったりせずにはいられなくなります。
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)は、脚の奥に不快な感覚が生じ、脚を動かしたくてたまらなくなる病気です。夕方から夜、じっと座ったり横になったりすると強まり、眠りを妨げます。
むずむず脚は珍しい病気ではありません。日本の診療ガイドラインでは、日本人の有病率は1〜3%とされ、やや女性に多く、年齢とともに増えるとされています。ところが、脚の不快感や痛みを伴うため、最初に皮膚科や整形外科を受診することが多く、診断が遅れやすいことも指摘されています[2]。
2. アカシジア——薬を始めた・増やしたあとに出る落ち着かなさ
アカシジアは、脳のドパミンの働きを抑える薬(主に抗精神病薬)でよく知られた副作用です。東京大学の研究グループが2024年に発表した論文では、先行研究をもとに、抗精神病薬を使う人のおよそ5人に1人がアカシジアを経験すると紹介されています[3]。また、98件のランダム化比較試験を統合した解析では、薬の量が多いほどアカシジアが起こりやすいという関係が示されています[4]。
抗精神病薬だけでなく、一部の抗うつ薬で起こった報告もあります[5]。抗精神病薬は統合失調症だけでなく、うつ病の増強療法や双極症、不眠などにも使われるため、「自分は精神病の薬は飲んでいない」と思っている方にも起こりえます。
見逃すと、なぜ困るのか
アカシジアの落ち着かなさは、本人にとって非常に苦しいものです。しかも外から見ると「不安が強くなった」「病気が悪化した」ように見えるため、かえって薬が増やされてしまうことがあります。初めて統合失調症を発症した方を追跡したドイツの研究では、アカシジアのある人で自殺念慮が多くみられたと報告されています[6]。これは因果関係を証明したものではありませんが、「薬を始めてから、いてもたってもいられない」という訴えは、軽く扱ってはいけないサインだということです。
診察では、座っているときや立っているときの様子を観察し、本人の感じている落ち着かなさの強さと合わせて評価します。評価には、1989年に作られた専用の評価尺度(バーンズ・アカシジア評価尺度)が今も広く使われています[7]。
3. むずむず脚症候群——夜、じっとすると脚が落ち着かない
国際レストレスレッグス症候群研究グループが2014年に改訂した診断基準では、次の5つすべてを満たすことが求められています[1]。
- 脚を動かしたいという強い欲求がある(多くは脚の不快な感覚を伴う)
- その欲求や不快感は、座る・横になるなど、じっとしているときに始まるか強まる
- 歩く・伸ばすなど体を動かすと、動いている間は一部または完全に楽になる
- 夕方から夜に強まる(または夕方から夜にだけ起こる)
- これらの症状が、ほかの病気や状態(こむら返り、しびれ、関節の痛み、アカシジアなど)だけでは説明できない
5つ目の条件は2014年の改訂で加えられたもので、よく似た別の状態との取り違えを減らすことが目的です。感覚の表現は人によってさまざまで、「むずむずする」「虫がはうような」「ほてる」「うずく」などと表現されます。
むずむず脚では、鉄不足との関係がよく知られています。一般的な貧血の検査では「異常なし」でも、体内に蓄えられた鉄が少ないと症状が出やすいとされています。米国睡眠医学会(AASM)の新しい診療ガイドラインでは、症状が生活に影響している人には、定期的に血液検査で鉄の状態を確かめるよう勧めています[8]。
同じガイドラインでは、むずむず脚を悪化させる要因として、アルコール、カフェイン、抗ヒスタミン作用のある薬(一部のかぜ薬・アレルギー薬など)、セロトニンに作用する薬(一部の抗うつ薬)、ドパミンの働きを抑える薬、治療していない睡眠時無呼吸症候群を挙げ、まずこれらを見直すことを最初の一歩としています[8]。
心の病気に使う薬の中には、アカシジアを起こしうる薬と、むずむず脚を悪化させうる薬の両方が含まれます。つまり、同じ「薬を始めてから脚が落ち着かない」という訴えでも、アカシジアのこともあれば、薬によって引き出されたむずむず脚のこともあり、両方が重なっていることもあります。
4. 見分けるポイント
典型的な例を並べると、次のようなちがいがあります。ただし、あくまで典型例であり、実際には重なり合うことも少なくありません。
ご自身で振り返るときは、次の3つの問いが役に立ちます。
- いつから?——新しい薬を始めた、あるいは量が増えた時期と重なっていないか
- いつ強い?——一日中なのか、夕方から夜、とくに横になったときに強いのか
- どこが?——体全体の落ち着かなさか、脚の奥の不快な感覚が中心か
受診の際には、お薬手帳と、症状が始まった時期のメモがあると診察がとても進みます。複数の医療機関から薬が出ている場合は、すべての薬が分かるようにお持ちください。
5. 対処法と、まだ分かっていないこと
アカシジアへの対処
アカシジアへの対処の基本は、原因となっている薬の量を調整する、あるいは別の薬に切り替えることです。そのうえで、必要に応じて落ち着かなさを和らげる薬を追加することがあります。
2024年に東京大学の研究グループが発表したネットワークメタ解析(複数の治療を一度に比較する解析方法)は、この「追加する薬」について、19件の臨床試験・661人のデータを統合したものです[3]。
結果を見ると、セロトニン2A受容体を遮断する作用のある薬(一部の抗うつ薬など)とβ遮断薬(血圧や脈を下げる薬の一種)で改善がみられました。ただし、この解析には大きな限界があります。
- 元になった試験は1試験あたり平均35人と小規模で、6割超(19件中12件)が偏りのリスクが高いと判定された
- 追跡期間は平均約6日間で、1か月を超えて効果を確かめた試験はなかった
- 基本とされる「減量」や「薬の切り替え」を検証したランダム化比較試験は1件もなかった
著者らは、追加の薬は「原因の薬を減らしたり変えたりするのが難しいときに、副作用に注意しながら考えるもの」と結論づけています[3]。追加する薬にも、眠気、体重増加、ふらつき、脈が遅くなるなどの副作用があるためです。
むずむず脚への対処
米国睡眠医学会は2024年に12年ぶりとなる治療ガイドラインを公表し、治療の考え方を大きく変えました[8]。
- 悪化させる要因を見直す:カフェイン、アルコール、関係しうる薬、睡眠時無呼吸症候群
- 鉄の状態を確かめる:血液検査で蓄えられた鉄の量などを調べ、足りなければ補う。むずむず脚での目安は、一般の貧血の基準より高く設定されている
- 薬を使う場合:神経の過剰な興奮を抑えるタイプの薬(α2δリガンド)が強く推奨された。一方、これまで広く使われてきたドパミン系の薬は、長く使ううちに症状がかえって強まる「症状増強」の問題から、標準的な使用は勧めないとされた
日本でも2024年に診療ガイドラインが改訂され、日本神経治療学会が日本神経学会・日本睡眠学会などと協力して作成しています[2]。国内でむずむず脚に保険適用のある薬には、ドパミン系の薬とα2δリガンドの両方があります。すでにドパミン系の薬で安定している方もおり、米国のガイドラインも、すでに使っている人の切り替え方については十分なデータがないとしています。
ただし、いてもたってもいられない苦しさが強い、死にたい気持ちが出てきたという場合は、次の診察を待たずに、すぐに処方元の医療機関へ連絡してください。夜間などで連絡がつかない場合は、救急医療機関の受診をご検討ください。
分かっていること・分かっていないこと
精神科・心療内科の薬を処方する立場からいえば、アカシジアもむずむず脚も、患者さんが「言い出しにくい」症状です。「落ち着きがないと思われたくない」「薬をやめたいと言ったら怒られるのでは」と我慢してしまう方も少なくありません。薬の副作用は、処方した側がいちばん知っておくべき情報です。遠慮なくお伝えください。
よくあるご質問
アカシジアとむずむず脚が同時に起こることはありますか?
抗うつ薬を飲み始めてから、そわそわして落ち着きません。やめたほうがいいですか?
むずむず脚は何科に相談すればよいですか?
鉄のサプリメントを飲めば、むずむず脚は良くなりますか?
妊娠中からむずむず脚の症状が出ました。
受診するとき、何を伝えればよいですか?
「じっとしていられない」がつらいときに
薬を飲み始めてからの落ち着かなさ、夜に脚が気になって眠れない、といったお困りごとをご相談いただけます。特定の検査や治療をお約束するものではありませんが、まずはお話を伺い、必要に応じて専門の医療機関もご案内します。他院で治療中の方は、まず主治医へのご相談をおすすめします。
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F
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TEL 092-401-4556/平日は朝7時から診療しています
参考文献(一次情報)
- Allen RP, Picchietti DL, Garcia-Borreguero D, et al. Restless legs syndrome/Willis-Ekbom disease diagnostic criteria: updated International Restless Legs Syndrome Study Group (IRLSSG) consensus criteria. Sleep Med. 2014;15(8):860-873. doi:10.1016/j.sleep.2014.03.025
- 日本神経治療学会(監修),「標準的神経治療:Restless legs症候群診療ガイドライン」作成委員会(編). 標準的神経治療:Restless legs症候群診療ガイドライン(2024). 神経治療学. 2024;41:129-176. Mindsガイドラインライブラリ
- Furukawa Y, Imai K, Takahashi Y, Efthimiou O, Leucht S. Comparative efficacy and acceptability of treatment strategies for antipsychotic-induced akathisia: a systematic review and network meta-analysis. Schizophr Bull. 2026;52(2):sbae098(オンライン公開2024年6月). doi:10.1093/schbul/sbae098
- Wu H, Siafis S, Wang D, et al. Antipsychotic-induced akathisia in adults with acute schizophrenia: a systematic review and dose-response meta-analysis. Eur Neuropsychopharmacol. 2023;72:40-49. doi:10.1016/j.euroneuro.2023.03.015
- Lipinski JF, Mallya G, Zimmerman P, Pope HG. Fluoxetine-induced akathisia: clinical and theoretical implications. J Clin Psychiatry. 1989;50:339-342. PMID: 2549018
- Seemüller F, Schennach R, Mayr A, et al. Akathisia and suicidal ideation in first-episode schizophrenia. J Clin Psychopharmacol. 2012;32(5):694-698. doi:10.1097/JCP.0b013e3182677958
- Barnes TRE. A rating scale for drug-induced akathisia. Br J Psychiatry. 1989;154:672-676. doi:10.1192/bjp.154.5.672
- Winkelman JW, Berkowski JA, DelRosso LM, et al. Treatment of restless legs syndrome and periodic limb movement disorder: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2025;21(1):137-152. doi:10.5664/jcsm.11390
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