子どものADHD治療薬、
いま何が使われている?
処方の最新研究(北里大学)からわかること
「うちの子の薬は、これでいいのかな?」――ADHDと診断されるお子さんが増えるなか、多くの保護者が抱く疑問です。2026年、北里大学が日本の子どものADHD治療薬の“処方の実態”を分析しました。4つの薬の違いや近年の変化を、精神科専門医がやさしく解説します。
子どものADHD、薬はどう選ばれている?
近年、ADHD(注意欠如・多動症)と診断されるお子さんは増えています。薬による治療は大切な選択肢の一つですが、「うちの子の薬は、他の子と違うけれど大丈夫?」「どうしてこの薬なんだろう?」と不安に感じる保護者は少なくありません。
2026年、北里大学の研究グループが、日本の17歳以下の子どものADHD治療薬が実際にどう処方されているかを大規模に分析し、近年の大きな変化を明らかにしました。この記事では、その内容をもとに、薬の違いや処方の傾向を整理します。あわせて、「薬は治療の一部であり、土台はお子さんへの支援や環境の調整にある」という大切な考え方もお伝えします。
日本のADHD治療薬は4種類 ― 刺激薬と非刺激薬
日本で子どもに使えるADHDの薬は、大きく「刺激薬」と「非刺激薬」に分かれます。刺激薬には、メチルフェニデート徐放錠(コンサータ)とリスデキサンフェタミン(ビバンセ)があります。効果を実感しやすい一方、乱用を防ぐために「適正流通管理システム」で厳しく管理され、登録された医師・薬局でのみ扱えます。ビバンセは、他の薬が効かない場合に限って使うこととされています。
非刺激薬には、アトモキセチン(ストラテラ)とグアンファシン(インチュニブ)があります。刺激薬とは作用の仕方が異なり、効果はゆるやかに現れる傾向があります。それぞれ特徴が異なり、どれが合うかはお子さんによって変わります。
処方の“地図”が、この数年で変わってきた
北里大学の研究グループは、健康保険のデータを用いて、0〜17歳のお子さんを対象に、2018年から2023年までのADHD治療薬の処方の移り変わりを調べました。最も大きな変化は、グアンファシン(インチュニブ)の処方が大きく増えたことです。処方された割合は19.3%から46.4%へと増加しました。一方で、メチルフェニデートは64.7%から47.5%へ、アトモキセチンは34.4%から22.4%へと減っています。2019年末に登場したビバンセは、2023年に5.2%でした。
さらに、女の子や、6〜12歳の年代、精神科ではグアンファシンが最も多く選ばれるようになった一方、13〜17歳の年代ではメチルフェニデートが依然として多いという違いも見られました。多くのお子さん(約8割)は、1種類の薬だけで治療されていました。
「増えている=一番良い薬」ではありません
グアンファシンが増えた背景には、1日1回の服用でよいこと、流通管理の規制がなく処方や受け取りの手続きが比較的シンプルなこと、独自の作用の仕方など、複数の要因があると考えられています。ただし、これは「グアンファシンが一番優れている」という意味ではありません。どの薬が合うかは、お子さんの症状のタイプ・年齢・体質・生活・副作用の出方によって一人ひとり違います。お子さんの薬が他の子と違っても、心配する必要はありません。
そして何より大切なのは、薬は治療の“一部”だということ。ADHDの支援の土台は、まわりが特性を理解して関わり方を工夫すること、保護者が関わり方を学ぶ「ペアレント・トレーニング」、学校など環境の調整、そしてお子さん自身への支援です。薬は、こうした取り組みを進めやすくするための助けです。副作用が心配なときや「薬が合わない気がする」ときは、自己判断でやめず、まず主治医にご相談ください。
お子さんのこと、そしてご自身のことも
お子さんの薬について不安や疑問があるときは、遠慮なく主治医にお尋ねください。処方の傾向はあくまで“参考”で、最終的にはお子さんに合わせて、主治医と相談しながら決めていくものです。お子さん本人の診療は、かかりつけの小児科や児童精神科など、お子さんを専門に診る窓口ともよくご相談ください。
また、お子さんの診断をきっかけに、「もしかして自分も…」とご自身のADHDに気づく保護者も少なくありません。大人になってから特性に気づき、生きづらさの理由が腑に落ちる方も増えています。ご自身のこころの疲れや、大人のADHDが気になるときは、当院にご相談ください。子育ての大変さを一人で抱え込まず、頼れる場所を持っておくことも、お子さんにとって大切な支えになります。
子どものADHD治療薬についてのQ&A
日本で子どもに使えるADHDの薬は、何種類ありますか?
なぜ最近、グアンファシン(インチュニブ)が増えているのですか?
うちの子の薬は、他の子と違います。大丈夫でしょうか?
薬を飲めば、ADHDは“治る”のですか?
副作用が心配です。合わない気がするときは、どうすれば?
刺激薬は「依存」が心配です。使っても大丈夫ですか?
子育ての大変さも、ご自身のことも
「もしかして自分も?」――大人のADHDやこころのお疲れは、当院へ。
平日朝7時から、お仕事の前に受診いただけます。
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F / 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分
TEL 092-401-4556 / 平日 朝7時〜
主な参考文献(一次情報)
- Suzuki R, et al. Prescribing medications for attention-deficit/hyperactivity disorder in children: a retrospective analysis of a Japanese health insurance claims database. BMC Psychiatry. 2026 May 14.(北里大学・0〜17歳・2018〜2023年)
- 厚生労働省・関連学会「ADHDの診断・治療に関するガイドライン」等
- ADHD適正流通管理システム(メチルフェニデート徐放錠・リスデキサンフェタミンの流通管理)
ご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。引用した研究は健康保険データベースを用いた後方視的分析であり、処方の割合などはすべてのお子さんに一律に当てはまるものではありません。お薬の種類・量の変更や中止は、必ず主治医の指示のもとで行ってください。お子さんの治療や薬について不安があるときは、かかりつけ医や児童精神科など、お子さんを診療する医療機関にご相談ください。
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