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心の病は「特別な人の問題」ではない ― 世界の大規模研究が示す、精神疾患による健康損失

心の病は「特別な人の問題」ではない ― 世界の大規模研究が示す、精神疾患による健康損失|六本松こころのクリニック
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心の病は「特別な人の問題」ではない
世界の大規模研究が示す、精神疾患による健康損失

「まさか自分が」「弱いからだ」――そう感じて受診をためらう方は少なくありません。けれど世界の大規模研究は、心の不調がとてもありふれたものであることを示しています。数字が語る事実と、そこから見える希望を、精神科専門医がやさしくお伝えします。

🌍 世界で約10億人 📊 うつ病は世界2位 🕊 そして、向き合えるもの
監修:前田 輝六本松こころのクリニック 院長)/精神保健指定医・日本専門医機構認定 精神科専門医。「今できることをする」「患者さんの生活ごと支える」を大切にしています。
01はじめに

「まさか自分が」――その思い込みを、数字がほどく

心の不調を感じても、「自分が心の病になるなんて」「気の持ちようだ」「相談するほどではない」と、受診をためらう方はとても多くいらっしゃいます。その背景には、「心の病は一部の特別な人のもの」という思い込みがあるのかもしれません。

けれど、世界中のデータを集めた大規模な研究は、まったく違う事実を示しています。心の不調は、世界で最も多くの人が抱える健康上の課題のひとつなのです。この記事では、精神疾患による健康損失についての世界的な調査をもとに、「あなただけではない」という事実と、そこから見える希望をお伝えします。

02世界の研究が示すこと

精神疾患は「健康損失」の最大級の原因のひとつ

世界疾病負荷研究(GBD)は、204の国と地域を対象に、さまざまな病気が人々の健康にどれだけの負担をもたらすかを測る、世界最大級の研究です。その最新の分析(2021年)は、精神疾患が「障害による健康損失(YLD)」の最大級の原因のひとつであることを示しました。実に、世界のYLD全体のおよそ6分の1を占めています。

個別の病気で見ると、うつ病は世界のYLD原因の第2位、不安症は第6位にのぼります。世界保健機関(WHO)の推計では、およそ9億7,000万人(約10億人)が心の不調とともに生きているとされ、その数は近年、増加傾向にあります。つまり心の不調は、決して珍しいものではなく、誰の身にも起こりうる、ごくありふれたものなのです。

図1:数字が語る、心の不調のひろがり
約10億人 世界で心の不調と ともに生きる人 世界 第2位 うつ病 (健康損失の原因) 世界 第6位 不安症 (健康損失の原因)
精神疾患全体では、世界の「障害による健康損失(YLD)」のおよそ6分の1を占めます(GBD 2021)。
03負担のかたち

「命を奪う」より「暮らしを重くする」病

精神疾患の負担には、少し特徴があります。多くの病気は「命を落とす(亡くなる)」ことで負担が測られますが、精神疾患が直接の死因として記録されることは多くありません。代わりに、その負担の大部分は「障害とともに生きる時間(YLD)」――つまり、つらさを抱えながら日々を過ごす時間として現れます。

言いかえれば、心の不調は仕事や勉強、人づきあい、毎日の生活のしづらさとして、じわじわと重くのしかかります。命に直結しにくいぶん「たいしたことない」と見過ごされがちですが、生活の質への影響はとても大きいのです。しかも、こうした不調は10代の若い世代から多くみられます。だからこそ、早めに気づき、支援につながることに大きな意味があります。

図2:精神疾患の負担は「暮らしのしづらさ」に表れる
小さい 大きい(負担) 命を落とす負担 小さめに表れる 暮らしのしづらさ とても大きい
「障害とともに生きる時間(YLD)」として、日々の暮らしに重くのしかかるのが、心の不調の特徴です。
04届いていない支援

ありふれているのに、多くの人が支援に届いていない

これほどありふれているにもかかわらず、必要な治療や支援を受けられていない人が、世界的にとても多いことも、研究から見えてきます。うつ病であっても、実際に治療にたどりつく人は一部にとどまる国が少なくありません。この「支援に届いていない差」を、治療ギャップと呼びます。

背景には、「心の弱さだと思われたくない」という偏見(スティグマ)や、「相談するほどのことではない」という遠慮、「どこに行けばいいのかわからない」という戸惑い、受診そのもののハードルの高さがあります。けれど大切なのは、心の不調は、和らげたり回復させたりできるものだということ。そして、早めに相談するほど、回復への道はゆるやかになりやすいのです。

🕊 「これくらいで」と思うときこそ 受診の目安は、症状の重さそのものよりも「つらさが続いているか」「生活に支障が出ているか」です。気分の落ち込みや不安、眠れない状態が2週間以上続く、あるいは仕事・学業・生活がしづらいと感じるなら、「これくらいで受診していいのかな」と思う段階こそ、相談どきです。
図3:ありふれている。だから、ためらわないで
ありふれている 誰にでも起こりうる でも届きにくい 偏見・遠慮・ハードル 早めの相談で 和らげられる
ありふれていて、そして向き合える。その両方を知ることが、最初の一歩を軽くしてくれます。
05当院の考え方

受診のハードルを、少しでも低く

当院は、平日朝7時からの診療を通じて、「受診しやすいこと」を何より大切にしてきました。心の不調は、意志の弱さでも、あなたが特別だからでもありません。世界中の、たくさんの人が同じように抱えている、ごくありふれたものです。そして、ひとりで抱え込まなくてよいものです。

「これくらいで受診していいのかな」とためらう、その段階こそ、いちばん相談していただきたいタイミングです。数字は、あなたが決して一人ではないことを教えてくれます。つらさが続くときは、どうか気軽に声をかけてください。生活ごと、一緒に整えていきます。

?よくあるご質問

精神疾患と健康損失についてのQ&A

精神疾患は、そんなに多いのですか?
はい。世界保健機関の推計では、およそ9億7,000万人(約10億人)が心の不調とともに生きているとされます。世界の大規模研究では、うつ病は「障害による健康損失」の原因として世界第2位、不安症は第6位で、精神疾患全体では世界のYLDのおよそ6分の1を占めます。決して珍しいものではなく、誰にでも起こりうるものです。
「障害による健康損失(YLD)」とは何ですか?
病気やケガによって「障害を抱えながら生きる時間」を数値化したものです。精神疾患は命に直結しにくいぶん、亡くなる原因としては小さく表れますが、つらさを抱えて日々を過ごす時間(YLD)としての負担が非常に大きいのが特徴です。つまり、暮らしのしづらさとして重くのしかかる病といえます。
心の不調は、放っておいても治りますか?
自然に和らぐこともありますが、長引いたり悪化したりすることも少なくありません。大切なのは、心の不調は「和らげたり回復させたりできる」ということです。そして、早めに相談するほど回復の道はゆるやかになりやすい傾向があります。「様子を見る」だけで抱え込まず、つらさが続くなら相談を検討してください。
どのくらいの状態になったら、受診したほうがいいですか?
症状の重さそのものより、「つらさが続いているか」「生活に支障が出ているか」を目安にしてください。気分の落ち込みや不安、眠れない状態が2週間以上続く、または仕事・学業・生活がしづらいと感じるなら、受診をおすすめします。判断に迷う段階でのご相談も歓迎です。
「相談するほどでもない」気がして、受診をためらいます。
その気持ちは自然なものですが、「これくらいで受診していいのかな」と思う段階こそ、実は相談どきです。早い時期のほうが、できることが多く、回復もゆるやかになりやすいからです。心の不調はありふれたもので、受診はけっして大げさなことではありません。どうか気軽に一歩を踏み出してください。
心の病は「弱さ」や「甘え」なのでしょうか?
いいえ、違います。心の不調は、意志の弱さや甘えではなく、脳やこころの健康にかかわる状態です。世界中で膨大な数の人が同じように抱えている、ごくありふれたものです。「弱いから」と自分を責める必要はまったくありません。むしろ、助けを求められることは大切な力です。

あなたは、一人ではありません

「これくらいで」と思うときこそ、ご相談を。
平日朝7時から、お仕事や学校の前に受診いただけます。

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六本松こころのクリニック(心療内科・精神科)
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F / 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分
TEL 092-401-4556 / 平日 朝7時〜

主な参考文献(一次情報)

  1. GBD 2021 Diseases and Injuries Collaborators. Global incidence, prevalence, YLDs, DALYs, and HALE for 371 diseases and injuries, 1990–2021. The Lancet. 2024.(うつ病はYLD原因第2位、不安症は第6位)
  2. Global Burden of Disease 2021: mental health messages. The Lancet Psychiatry. 2024.
  3. 世界保健機関(WHO). World Mental Health Report ほか(世界で約9億7,000万人が精神疾患とともに生活)
  4. Moitra M, et al. The global gap in treatment coverage for major depressive disorder in 84 countries. PLoS Medicine. 2022.(治療ギャップ)

ご注意

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。引用した研究の推計には対象・方法上の限界があり、順位や割合は分析の枠組みによって異なることがあります。心の不調のあらわれ方や必要な対応は人によって異なります。気分の落ち込みや強い不安が続くとき、生活に支障が出ているときは、自己判断で抱え込まず、医療機関にご相談ください。つらいお気持ちが強いときは、早めに専門機関へのご相談をおすすめします。

六本松こころのクリニック
心療内科・精神科/院長 前田 輝(精神保健指定医・精神科専門医)
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