通院精神療法とは?
2026年の診療報酬改定と
「精神保健指定医」の違い
診療明細にある「通院精神療法」とは、何のことでしょうか。2026年(令和8年度)の診療報酬改定で、この評価が見直されました。あわせて「精神保健指定医」という資格や、多すぎる薬(多剤処方)の適正化についても、精神科専門医がやさしく解説します。
明細の「通院精神療法」って、何だろう?
精神科や心療内科を受診すると、会計の明細に「通院・在宅精神療法」という項目があることに気づく方がいます。「これは何の料金だろう?」と疑問に思ったことはないでしょうか。実はこれは、精神科の診療で行われる大切な関わりを表すものです。
2026年(令和8年度)の診療報酬改定で、この通院精神療法の評価が見直されました。あわせて話題になったのが、「精神保健指定医」という資格の位置づけです。制度の話ではありますが、その中身は「どんな精神科医療が良質とされ、大切にされるのか」という、患者さんにとっても意味のあるものです。この記事では、そのポイントをやさしくお伝えします。
「薬をもらう時間」ではなく「診て、聴いて、支える時間」
通院精神療法とは、精神科・心療内科の診察のなかで行われる医師による専門的な関わりを評価する、保険診療の項目です。単にお薬を出すだけではありません。症状や生活の状況をていねいに聴き取り、状態を見立て、助言や支持的なやりとりを通じて回復を支える――その一連の関わりに対する評価です。
診察にかけた時間や、初診か再診かによって点数が異なります。保険が適用されるため、患者さんが支払うのは通常その一部(多くの方は3割)です。「たった数分の診察なのに」と感じることがあるかもしれませんが、短い時間の中にも、見立てや判断、言葉の選び方といった専門的な関わりが含まれています。
「専門性」と「適正な処方」を評価する方向へ
2026年の改定では、患者さんにとっても意味のある見直しがいくつか行われました。ひとつは、初診でていねいに時間をかけた診察が、より評価されるようになったことです(初診で30分以上60分未満の区分が新設され、60分以上はさらに引き上げ)。はじめての受診でしっかり話を聴くことが、制度としても後押しされました。
もうひとつ大切なのが、多すぎる薬(多剤処方)や、漫然とした処方の適正化です。たとえば抗うつ薬や抗精神病薬を何種類も重ねて出すような場合には、通院精神療法の評価が下がったり、算定できなくなったりする仕組みが設けられました。これは、「むやみに薬を増やさない」ことを制度として後押しするもので、患者さんにとっても安心につながる方向です。さらに、精神保健指定医による診療が、より評価されるようになりました(次の章で説明します)。
「精神保健指定医」と、非指定医の違い
精神保健指定医とは、精神保健福祉法にもとづき、厚生労働大臣が指定する医師です。一定以上の臨床経験(精神科での実務経験)を積み、所定の研修を受け、担当した症例の審査を経て、はじめて指定されます。誰でもすぐになれるものではありません。
この資格の大きな特徴は、その役割にあります。精神保健指定医は、本人の同意によらない入院(医療保護入院・措置入院)が必要かどうか、隔離や身体拘束といった行動制限が必要かどうかを判断する権限を持ちます。これらは患者さんの人権に深く関わる重要な判断であり、高い専門性と経験が求められます。一方、この資格を持たない医師を「非指定医」と呼びます。
「話を聴き、薬に頼りすぎない」診療を
当院は、院長(前田 輝)が精神保健指定医です。日々の診療では、ていねいに話を聴き、状態を見立て、必要なときに必要なだけお薬を使うことを大切にしています。むやみに薬の種類を増やす「多剤処方」や、見直しのないまま続く「漫然処方」を避ける――2026年の改定が目指す方向と、当院が大切にしてきたことは、同じところを向いています。
明細の点数の話は、難しく感じられるかもしれません。けれど本当に大切なのは、あなたが安心して相談でき、適切な治療を受けられることです。「この薬は必要なのかな」「診察の内容が気になる」といった疑問も、どうぞ遠慮なくお尋ねください。一つひとつ、一緒に確認しながら進めていきます。
通院精神療法と診療報酬についてのQ&A
明細にある「通院精神療法」とは何ですか?
2026年の診療報酬改定で、何が変わったのですか?
精神保健指定医とは、どんな資格ですか?
非指定医は、指定医より「劣った」医師なのですか?
「多剤処方の適正化」で、私の薬は減らされるのですか?
六本松こころのクリニックの院長は、精神保健指定医ですか?
診療のこと、お薬のこと、遠慮なく
「この治療でいいのかな」という疑問も、相談材料です。
平日朝7時から、お仕事や学校の前に受診いただけます。
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F / 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分
TEL 092-401-4556 / 平日 朝7時〜
主な参考文献(一次情報)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」(重点的な対応が求められる分野:精神医療/通院・在宅精神療法の見直し)
- 中央社会保険医療協議会(中医協)答申(令和8年2月13日)
- 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健指定医の指定・役割)
ご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診療報酬の算定や治療方針を示すものではありません。診療報酬の点数・要件は、告示・通知や運用の見直しにより変わることがあり、最新の内容は厚生労働省の資料等をご確認ください。お薬の種類・量の変更や中止は、必ず主治医の指示のもとで行ってください。自己判断での中止・減量は症状の悪化を招くことがあります。診療やお薬について不安があるときは、主治医または医療機関にご相談ください。
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