睡眠薬(オレキシン受容体拮抗薬)で
悪夢を見る?
リスク因子を世界初特定、その対処法
依存性が少なく安全性の高い新世代の睡眠薬「オレキシン受容体拮抗薬」。その副作用として知られる「悪夢」について、2026年、宮崎大学が“どんな人に起こりやすいか”を世界で初めて明らかにしました。なぜ起こるのか、出たときにどうすればよいかを、精神科専門医がやさしく解説します。
「睡眠薬を飲み始めたら、怖い夢を見るように」
近年、不眠症の治療で広く使われるようになった新しいタイプの睡眠薬に、「オレキシン受容体拮抗薬」があります。従来の睡眠薬に比べて依存性が少なく、自然な眠りを促すとされる一方で、「悪夢」や「やけに鮮明な夢」という副作用が知られています。実際に「この薬を飲み始めてから怖い夢を見る」というご相談も少なくありません。
2026年、宮崎大学の研究グループが、この悪夢が“どんな人に起こりやすいか”というリスク因子を、世界で初めて明らかにしました。誰に起こりやすいかがわかれば、心構えや対処がしやすくなります。過度に心配する必要はありません。この記事では、仕組み・リスク因子・対処法を、落ち着いてお伝えします。
なぜ悪夢が起きる? ― カギは「REM睡眠」
オレキシンは、脳の中で「覚醒(目が覚めている状態)」を保つ働きをする物質です。オレキシン受容体拮抗薬は、この働きをやさしく弱めることで、過剰な覚醒をしずめ、自然な眠りへと導きます。代表的な薬に、スボレキサント(ベルソムラ)やレンボレキサント(デエビゴ)などがあります。従来のベンゾジアゼピン系の睡眠薬より、依存やふらつきが起こりにくいとされています。
では、なぜ悪夢が起こるのでしょうか。これらの薬には、夢を見る眠りである「REM睡眠」を増やす傾向があると考えられています。REM睡眠が増えると夢を見やすくなり、とくに記憶に残りやすい悪夢が印象づけられやすくなる――これがオレキシン受容体拮抗薬に共通する特性だと考えられています。
悪夢の“リスク因子”を、世界で初めて特定
宮崎大学の研究グループは、同大学病院の精神科でレンボレキサントを使った患者327名(2020〜2024年)のデータをくわしく調べました。その結果、悪夢の起こりやすさに関わる3つのリスク因子を、世界で初めて突き止めました。①若い年代(10〜29歳)、②抗不安薬タンドスピロンの併用、③ベンゾジアゼピン系の睡眠薬からの切り替え――この3つです。
一方で、50歳以上の方では悪夢の発現が少なく、高齢の方には比較的使いやすい睡眠薬である可能性も示されました。また、同じ仲間の薬であるスボレキサントでも若い年代で悪夢が多いことが先行研究で報告されており、若年での悪夢の起こりやすさは、この種類の薬に共通する特性かもしれないと考えられています。
悪夢が出ても、あわてないで ― でも自己判断で急にやめない
もし悪夢が出ても、まず落ち着いてください。多くの場合、お薬の調整などで対処できます。大切なのは、自己判断で急に薬をやめないこと。急な中止でかえって不眠がぶり返してしまうことがあります。つらい夢が続くときは、我慢せず、まず主治医や薬剤師に相談してください。
相談すると、医師は状況に応じて、飲むタイミングや量の調整、別のタイプの薬への変更、いっしょに飲んでいるお薬の見直しなどを検討します。あわせて、就寝前のストレスや刺激を減らす、睡眠のリズムを整えるといった生活面の工夫も助けになります。お薬に頼りきらない不眠へのアプローチとして、不眠症の認知行動療法(CBT-I)も有効です。当院の不眠に関する記事もあわせてご覧ください。
睡眠薬は「合わせて調整する」もの
睡眠薬は、はじめから完璧に合うとは限りません。効果や副作用を見ながら、一人ひとりに合わせて少しずつ調整していくものです。悪夢を含む副作用は、どうか遠慮なくお聞かせください。とくに、若い方や、これまでの睡眠薬から切り替えたばかりの方には、飲み始めのフォローを丁寧に行うことを心がけています。
当院は平日朝7時から診療しており、お仕事や学校の前に受診いただけます。「眠れない」「睡眠薬が合っている気がしない」「怖い夢が続く」――どんな入り口からでも、あなたの睡眠と生活を一緒に整えていきます。
オレキシン受容体拮抗薬と悪夢についてのQ&A
睡眠薬で悪夢を見ることは、本当にあるのですか?
どんな人が悪夢を見やすいのですか?
悪夢が出たら、薬をやめたほうがいいですか?
悪夢が出たとき、どんな対処法がありますか?
高齢ですが、この薬を使っても大丈夫でしょうか?
薬に頼らずに不眠を改善する方法はありますか?
「怖い夢が続く」も、遠慮なくご相談を
睡眠薬は、合わせて調整していくもの。
平日朝7時から、お仕事や学校の前に受診いただけます。
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F / 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分
TEL 092-401-4556 / 平日 朝7時〜
主な参考文献(一次情報)
- 宮崎大学 プレスリリース「『副作用が発現しやすい患者』を事前に見極める ―新世代睡眠薬レンボレキサントによる悪夢のリスク因子を世界で初めて解明―」(2026年6月12日)
- Yasuda K, et al.(宮崎大学). レンボレキサントによる悪夢のリスク因子に関する研究. Journal of Clinical Psychopharmacology. 2026.
- 同研究グループによる先行研究(スボレキサントと若年層における悪夢の発現)
ご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。引用した研究は単一施設の精神科患者を対象とした後方視的研究であり、悪夢の発現率などはすべての方に一律に当てはまるものではありません。お薬の種類・量の変更や中止は、必ず主治医の指示のもとで行ってください。自己判断での急な中止は不眠の悪化などを招くことがあります。眠れないことや副作用について不安があるときは、主治医または医療機関にご相談ください。
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