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抗うつ薬と出血リスクSSRIを安全に使うために

抗うつ薬と出血リスク|SSRIを安全に使うために|六本松こころのクリニック
最新トピックス / お薬と安全

抗うつ薬と出血リスク
SSRIを安全に使うために

SSRIには「血が止まりにくくなる」作用があります。でも、正しく知って備えれば、過度に恐れず安全に使えます。

上部消化管出血が約2倍
痛み止め・抗凝固薬で増強
胃薬で軽減できる
監修
院長 前田 輝 精神保健指定医/日本専門医機構認定 精神科専門医

「出血リスク」と聞くと不安になりますよね。でも、多くの方にとって過度に恐れる必要はありません。リスクが高まる条件を知り、ちょっとした工夫をすれば、安全に治療を続けられます。大切なのは“自己判断でやめないこと”です。

SSRIなどの抗うつ薬は、うつや不安の治療に欠かせない薬です。一方で、「血が止まりにくくなる(出血しやすくなる)」作用があることも知られています。とくに高齢の方、血液をサラサラにする薬や痛み止めを使っている方は注意が必要です。でも、正しく知って備えれば、過度に恐れることなく、安全に使えます。

1MECHANISM

なぜ出血しやすくなるの?

血を止める役割を担うのが「血小板(けっしょうばん)」です。実は血小板は、血液中のセロトニンを取り込んでため込み、出血のときに放出して、止血を助けています。

SSRIは、このセロトニンの“取り込み”をブロックする薬です。脳ではそれが抗うつ効果につながりますが、血小板でも同じことが起こり、血小板の中のセロトニンが減ってしまいます。その結果、いざというときの止血力がやや落ち、出血しやすくなる——これが主な仕組みです。加えて、SSRIには胃酸を増やして胃を荒れやすくする作用もあり、これも胃腸の出血に関わると考えられています。

血小板とセロトニン ― 止血のしくみ 通常 血小板 セロトニンをたっぷり蓄え しっかり止血できる SSRI使用時 血小板 取り込みが阻害され セロトニンが減り、止血力が低下
SSRIは血小板のセロトニンを減らし、止血力をやや下げます。これが出血しやすくなる主な理由です。出典:抗うつ薬と出血リスクに関する各種レビューをもとに作図
2HOW MUCH

リスクはどのくらい?

研究をまとめると、SSRIの使用で胃や腸など上部消化管の出血が、およそ2倍(報告により約1.2〜2.4倍)に増えるとされています。出血が起こりやすいのは主に胃腸で、ほかに手術のとき、出産後、まれに脳内などでも報告があります。

💡 「2倍」と聞くと驚くかもしれませんが、これは相対的な増え方です。もともとのリスクが低い健康な方では、実際に出血が起こる確率(絶対リスク)はわずか。多くの方にとって、過度に心配する必要はありません。注意が必要なのは、次に説明する“リスクが重なる方”です。
3RISK FACTORS

リスクが高まる「組み合わせ」と「人」

出血リスクは、ほかの要因が重なると大きく上がります。とくに次の組み合わせは要注意です。

出血リスクを「上げる要因」と「下げる工夫」 SSRIの 出血リスク ▲ 重なると大きく上がる 痛み止め(NSAID)併用 抗凝固薬(DOAC等) 抗血小板薬(アスピリン) 高齢・胃潰瘍既往・肝障害 ▼ 胃薬(PPI)の併用で軽減できる NSAIDとの併用は、上部消化管出血のリスクを特に大きく高めます
とくに「痛み止め(NSAID)」との併用は、上部消化管出血のリスクを何倍にも高めます。一方、胃薬(PPI)の併用はリスクを下げます。出典:抗うつ薬と出血リスクに関する各種メタ解析・レビューをもとに作図
  • 痛み止め(NSAID)との併用:ロキソニン・イブプロフェン等。上部消化管出血のリスクが大きく上昇します。
  • 血液をサラサラにする薬:抗凝固薬(ワルファリン・DOAC)、抗血小板薬(アスピリン等)との併用。
  • もともと出血しやすい条件:高齢、胃・十二指腸潰瘍の既往、肝臓の病気など。
4DRUG DIFFERENCES

薬によってリスクの大きさが違う

抗うつ薬は、セロトニンの取り込みを“強く”抑える薬ほど、出血リスクが高くなる傾向があります。逆に、セロトニンの取り込みをほとんど抑えないタイプの薬は、リスクが低いと考えられています。

出血リスクの目安(セロトニン取り込みの強さ別) リスク 高め リスク 低め 取り込みを強く抑える パロキセチン セルトラリン フルオキセチン 中くらい シタロプラム エスシタロプラム など ほとんど抑えない ミルタザピン ブプロピオン (出血リスクが低い候補)
出血リスクが高い方には、セロトニン取り込みをほとんど抑えない薬(ミルタザピン等)が代替候補になります。最終的な薬選びは、効果や他の副作用も含めて主治医が判断します。出典:Association of Medicine and Psychiatry コンセンサス(J Psychosom Res, 2026)ほかをもとに作図

そのため、出血リスクが高い方では、ミルタザピンなど“出血リスクの低い薬”への変更が検討されることもあります。米国の専門家グループ(Association of Medicine and Psychiatry)も2026年に、出血リスクの高い患者さんを見極め、薬を選ぶための手順を示しています。

5SAFE USE

安全に使うための5つの工夫

  • 痛み止めはNSAIDを避ける:可能ならアセトアミノフェン(カロナール等)を選ぶ。市販の痛み止め・風邪薬にもNSAIDが含まれるので注意。
  • 必要なら胃薬(PPI)を併用:胃腸の出血リスクを下げられます。
  • 飲んでいる薬は、すべて医師・薬剤師に伝える:抗凝固薬・抗血小板薬との併用は要相談。
  • 手術・抜歯の前は申告を:医師・歯科医にSSRIを服用中であることを伝えましょう。
  • 出血のサインに注意:黒い便・血便、原因不明のあざ、歯ぐきや鼻の出血が止まりにくい——こうした症状があれば、早めに受診を。
⚠ 黒い便(タール便)や血を吐くなどがあれば、消化管出血のサインの可能性があります。早めに医療機関を受診してください。
6BALANCE

でも、自己判断でやめないで

出血リスクは大切な注意点ですが、「だから抗うつ薬は危険」ではありません。多くの方にとって、うつや不安をしっかり治療する利益は、出血リスクを上回ります。むしろ、怖くなって自己判断で急にやめると、うつの悪化や、めまい・不調といった離脱症状を招くおそれがあります。

大切なのは、「リスクを正しく知り、医師と一緒に備えながら使う」こと。心配な点があれば、薬を変える・胃薬を足す・痛み止めを見直すなど、できる工夫はたくさんあります。まずは主治医にご相談ください。

7AT OUR CLINIC

当院でのお薬の考え方

当院では、お薬を選ぶとき、年齢・持病・飲み合わせ(とくに血液をサラサラにする薬や痛み止め)をていねいに確認します。出血リスクが気になる方には、リスクの低い薬を選んだり、胃薬の併用を検討したりと、お一人おひとりに合わせて調整します。

「飲んでいる薬が多い」「血をサラサラにする薬を使っている」「胃が弱い」——そんな方も、どうぞ遠慮なくお知らせください。当院は平日朝7時から診療しており、お薬の不安についてのご相談も歓迎します。

?FAQ

よくあるご質問

QSSRIを飲んでいます。出血が心配でやめたいのですが。
自己判断で急にやめないでください。急な中止は、うつの悪化や離脱症状を招くことがあります。多くの方では、出血の絶対リスクはわずかです。心配な点があれば、まず主治医に相談を。薬の変更や、胃薬の併用など、リスクを下げる方法を一緒に考えられます。
Q頭痛や生理痛のとき、市販の痛み止めを飲んでも大丈夫?
市販の痛み止めの多く(ロキソニン・イブ等)はNSAIDで、SSRIと併用すると胃腸の出血リスクが上がります。可能ならアセトアミノフェン(カロナール等)を選ぶと安心です。風邪薬にもNSAIDが含まれることがあるので、迷ったら薬剤師にご相談ください。
Q血液をサラサラにする薬を飲んでいます。SSRIは使えますか?
使えないわけではありませんが、出血リスクが重なるため、より慎重な判断が必要です。出血リスクの低い抗うつ薬を選ぶ、胃薬を併用する、出血のサインに注意する、などの対策をとります。必ず、抗凝固薬・抗血小板薬を服用中であることを主治医にお伝えください。
Q手術や抜歯の予定があります。SSRIは止めるべき?
自己判断では止めず、手術・抜歯を行う医師・歯科医に「SSRIを服用中」と必ず伝えてください。中止の必要性は、出血リスクと、うつの状態の両方をふまえて判断します。精神科の主治医とも連携して決めるのが安全です。
Q出血しにくい抗うつ薬はありますか?
セロトニンの取り込みをほとんど抑えないミルタザピンやブプロピオンなどは、出血リスクが低いと考えられています。出血リスクが高い方では、こうした薬が候補になることがあります。ただし、効果や他の副作用も含めて総合的に選ぶ必要があり、最終的な判断は主治医が行います。
Qどんな症状が出たら受診すればいいですか?
黒い便・血便、血を吐く、原因不明のあざ、歯ぐき・鼻の出血が止まりにくい——こうしたサインがあれば、早めに受診してください。とくに黒いタール状の便や吐血は、消化管出血の可能性があり、急いで対応が必要なことがあります。

お薬の不安、ひとりで抱えないで。

持病や飲み合わせもふまえて、安全なお薬選びを一緒に考えます。

平日 朝7時〜 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分 / 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F

参考文献

  1. Association of Medicine and Psychiatry. Antidepressants and bleeding risk: Expert consensus. J Psychosom Res. 2026.
  2. Andrade C, et al. Serotonin reuptake inhibitor antidepressants and abnormal bleeding: a review for clinicians and a reconsideration of mechanisms. J Clin Psychiatry. 2010;71(12):1565-1575.
  3. Bixby AL, et al. Clinical Management of Bleeding Risk With Antidepressants. Ann Pharmacother. 2019;53(2):186-194.
  4. Gomez-Lumbreras A, et al. Risk of gastrointestinal bleeding by specific SSRIs and SNRIs: A systematic review and meta-analysis. Br J Clin Pharmacol. 2026.

本記事は、一般的な情報提供を目的として、学術誌の公開情報をもとに作成したものです。出血リスクの大きさは、年齢・持病・併用薬により大きく異なります。お薬の開始・中止・変更や、痛み止めの選択は、自己判断せず必ず主治医・薬剤師にご相談ください。記載の薬剤情報は一般的な傾向であり、個別の処方を推奨するものではありません。

六本松こころのクリニック
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