うつ病の光療法——「冬のうつ」以外にも効果が示された
これから日が短くなる季節です。明るい光を浴びる「光療法」は、冬に気分が落ち込む季節性のうつの治療として知られてきました。ところが近年、季節と関係のない、ふつうのうつ病にも効果があるという報告が集まってきています。何が分かり、何がまだ分かっていないのか、そして誰が注意すべきなのかを整理します。
前田 輝(まえだ あきら) 院長
精神保健指定医/日本専門医機構認定 精神科専門医
複数の精神科病院・クリニックでの勤務を経て、2026年4月に福岡市中央区六本松で開業。平日朝7時からの診療を行っています。
うつ病の光療法は、専用の照明器具の前で一定時間、強い白色光を浴びる治療法です。薬のように体の中に何かを入れるわけではなく、目から入る光の刺激を利用します。季節性のうつに対してはすでに確立された方法とされてきましたが、ここ数年、「季節と関係ないうつ病にも、今の治療に上乗せすると効果がある」という結果がまとまってきました。
1. もともとは「冬のうつ」の治療だった
秋から冬にかけて気分が落ち込み、春になると回復する——そうしたパターンをくり返すうつを、季節性のうつ(冬季うつ)と呼びます。日照時間が短くなることが関係していると考えられており、明るい光を補う光療法は、この季節性のうつに対して効果が確立された治療とされてきました。
一方で、季節と関係なく起こるうつ病に光療法が効くかどうかは、長く「はっきりしない」とされてきました。一つひとつの研究の規模が小さく、結論を出しにくかったためです。
2. 11の試験を統合した解析
2024年10月、米国医師会の精神医学誌 JAMA Psychiatry に、この問いに答えるメタ解析が掲載されました(2025年1月号に収録)[1]。季節性でないうつ病の患者を対象にしたランダム化比較試験を集め、11試験・858人のデータを統合したものです。参加者の約76%が女性でした。
含まれた試験の多くは、抗うつ薬などの通常の治療を続けながら、そこに光療法を上乗せする形で行われていました。比較のための対照は、多くが暗い赤い光(50〜500ルクス未満)を浴びるもので、ほかに光を出さない偽の装置や、抗うつ薬のみの群が使われていました。
結果は、光療法を行った群で寛解率が40.7%(対照23.5%)、反応率が60.4%(対照38.6%)でした。オッズ比はそれぞれ2.42と2.34で、いずれも統計的に意味のある差です。試験ごとの結果のばらつきは小〜中程度にとどまっていました。
もう一つ注目されたのが、効果の出る速さです。追跡期間が4週間未満の試験に限っても、光療法の群で寛解率・反応率が高く、著者らは光療法が「最初の治療への反応を早める可能性がある」と述べています。抗うつ薬は効果が出るまでに数週間かかることが多いため、この点は臨床的に意味があります。
この解析以前にも、カナダで行われた8週間の二重盲検試験で、季節性でないうつ病の外来患者に対して、光療法単独でも、抗うつ薬と組み合わせても、偽の装置を使った群より効果があったと報告されていました[2]。
3. 研究で使われた「光療法」とは
ここで大事なのは、研究で使われた光の条件です。部屋の明かりや、ふだんの外出とは違います。
多くの場合、光療法は朝に行われます。体内時計を整える作用がとくに朝の光で強いと考えられているためです。ただし、どの時間帯が最適かは、うつの種類や一人ひとりの生活リズムによって異なり、まだ決まった答えはありません。
4. 注意が必要な方
光療法は、体に負担の少ない治療とされていますが、誰にでも安全というわけではありません。
双極症(躁うつ病)の方
双極症の方では、光療法によって気分が上がりすぎ、軽躁や躁の状態が引き起こされる可能性が指摘されています。双極症のうつに対しては、朝ではなく昼の時間帯に光を当てる方法を試したランダム化比較試験も行われていますが[3]、実施する場合は精神科医の管理のもとで、慎重に進める必要があります。
目の病気がある方、一部の薬を飲んでいる方
網膜の病気など目の病気がある方や、光に対する感受性を高める薬を使っている方は、事前に確認が必要です。また、光療法の副作用として、頭痛、目の疲れ、吐き気、いらいら感などが報告されています[4]。多くは軽いもので、光の時間や距離の調整で和らぐことが多いとされていますが、続く場合は相談が必要です。
5. 分かっていること・分かっていないこと
このメタ解析には、著者ら自身が挙げている限界もあります。寛解や反応をどう定義するか、どの程度の重さのうつを対象にしたかが試験ごとに異なり、双極症のうつを含む試験も混ざっていました。また、明るい光を浴びているかどうかは本人に分かりやすく、薬の試験のように「どちらを受けているか分からない」状態を完全につくるのは難しい、という光療法の研究に共通する課題もあります。
11試験・858人という規模は、このテーマではこれまでで最も大きいものですが、抗うつ薬の研究と比べれば小さな規模です。「効果がある可能性は十分に高まった。ただし、最適な使い方はまだ研究の途中」というのが現時点での正確な位置づけでしょう。
暮らしの中の「朝の光」
光療法とは別のこととして、朝に外の光を浴びることは、体内時計を整え、夜の眠りや日中の活動のリズムを保つうえで役に立つと考えられています。晴れた日の屋外は、曇りの日でも室内よりずっと明るいものです。
ただし、朝の散歩が研究で使われた光療法と同じ効果を持つかどうかは、確かめられていません。「光療法の代わり」ではなく、「生活リズムを支える習慣の一つ」として取り入れていただくのがよいと考えます。うつ病で朝起きるのがつらい時期に、無理に早起きして外に出る必要はありません。できる範囲から、で十分です。
よくあるご質問
うつ病の光療法は、冬のうつ以外にも効きますか?
市販の光療法用ライトを買って、自分で試してもよいですか?
朝、外を散歩するだけでも効果はありますか?
光療法をすれば、抗うつ薬は要らなくなりますか?
双極症と診断されています。光療法は受けられますか?
毎年、秋から冬にかけて調子を崩します。
気分の落ち込みが続くときに
季節の変わり目に調子を崩す、治療を続けているのにすっきりしない、といったご相談を承ります。光療法を含め、どのような治療の組み合わせが合うかを一緒に考えます。特定の治療の提供をお約束するものではありませんが、まずはお困りごとを伺います。平日は朝7時から診療しています。
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F
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TEL 092-401-4556/平日は朝7時から診療しています
参考文献(一次情報)
- Menegaz de Almeida A, Aquino de Moraes FC, Cavalcanti Souza ME, et al. Bright light therapy for nonseasonal depressive disorders: a systematic review and meta-analysis. JAMA Psychiatry. 2025;82(1):38-46(オンライン公開2024年10月2日). doi:10.1001/jamapsychiatry.2024.2871
- Lam RW, Levitt AJ, Levitan RD, et al. Efficacy of bright light treatment, fluoxetine, and the combination in patients with nonseasonal major depressive disorder: a randomized clinical trial. JAMA Psychiatry. 2016;73(1):56-63. doi:10.1001/jamapsychiatry.2015.2235
- Sit DK, McGowan J, Wiltrout C, et al. Adjunctive bright light therapy for bipolar depression: a randomized double-blind placebo-controlled trial. Am J Psychiatry. 2018;175(2):131-139. doi:10.1176/appi.ajp.2017.16101200
- Terman M, Terman JS. Light therapy for seasonal and nonseasonal depression: efficacy, protocol, safety, and side effects. CNS Spectr. 2005;10(8):647-663. doi:10.1017/S1092852900019611
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