精神科のオンライン診療は
対面と同じ効果?
国内初のRCT「J-PROTECT」が示したこと
「通院がつらい」「遠くて続けられない」――そんな悩みに、精神科のオンライン診療は答えになるでしょうか。対面診療に劣らないことを国内で初めて証明した大規模研究「J-PROTECT」の結果を、精神科専門医がわかりやすく解説します。
精神保健指定医/日本専門医機構認定 精神科専門医。「今できることをする」「患者さんの生活ごと支える」を大切に、受診しやすい診療を追求しています。
「通院がつらい」を、テクノロジーで超えられるか
外出そのものがつらい、職場や学校を抜けにくい、遠方で通いきれない――。心の不調を抱える方にとって、「通院を続けること」自体が大きな壁になることは少なくありません。そこで期待されるのが、スマートフォンのビデオ通話などで自宅から診察を受けられる精神科のオンライン診療です。
ただ、多くの方が気にされるのは「本当に、対面で診てもらうのと同じ効果があるの?」という点でしょう。この問いに、日本で初めてしっかりとした科学的な答えを出したのが、2023年に発表された研究「J-PROTECT」です。当院はITを積極的に活用する立場から、この研究がわかったことと、その“正しい読み方”を誠実にお伝えします。
国内初のRCTが示した「対面に劣らない」
J-PROTECTは、慶應義塾大学の岸本泰士郎特任教授らのグループが、国内19の精神科医療機関と協力して行った大規模な臨床研究です。うつ病・不安症・強迫症の患者さん199名を対象に、24週間にわたって治療効果を比べました。日本で初めての、精神科オンライン診療についての無作為化比較試験(非劣性試験)です。
結果は、心の健康に関わる生活の質(SF-36 MCSという指標)について、オンライン診療を取り入れたグループが、対面のみのグループに「劣らない(非劣性)」と証明されました。治療の中断率、患者さんの満足度、症状の重さといったほかの項目でも、両グループにはっきりした差はありませんでした。さらに、オンラインを取り入れたグループでは通院にかかる時間が短く、交通費などの負担も小さかったことが示されました。
誤解しないで ―「対面はもういらない」ではありません
この研究でとても大切なのは、比べたのが「完全オンライン」対「対面」ではないという点です。オンライン側のグループも、診療の半分以上をオンラインにしつつ、一部は対面診療を組み合わせていました。つまりJ-PROTECTが示したのは、「対面を土台にオンラインを上手に取り入れれば、対面だけの場合に劣らない」ということ。「オンラインだけで対面は要らない」を証明したわけではありません。
日本の制度も同じ考え方に立っています。精神科のオンライン診療は、厚生労働省の指針に沿って対面診療と組み合わせて行うことが前提で、はじめての診断や、症状が不安定なとき、急に具合が悪くなったときの対応などは対面が基盤になります。これは安全を守るための仕組みです。
便利さの裏にある、知っておきたいこと
オンライン診療の一番のメリットは、通院の負担が軽くなることです。移動の時間や交通費が減り、外出がつらい方や忙しい方でも治療を続けやすくなります。「通院が面倒で足が遠のく」ことが減り、治療の継続につながる点は、心の不調の回復にとって大きな意味があります。
一方で、注意しておきたい点もあります。安定した通信環境やプライバシーを保てる場所が必要なこと、画面越しでは表情や様子など対面ほど多くの情報が得られにくいこと、そしてお薬の処方には一定のルールがあることです。とくに向精神薬は、安全のためオンラインでの処方に制限が設けられています。こうした仕組みは、患者さんを守るためのものです。
「受診のハードルを下げる」の延長線上に
当院は、平日朝7時からの診療を通じて、「仕事や学校の前に立ち寄れる」「受診しやすい」ということを大切にしてきました。精神科のオンライン診療も、その延長線上にある選択肢として関心を持ち、今後の導入を検討しています。
ただ、いちばん大切にしたいのは「対面か、オンラインか」という手段そのものではなく、その方にとって続けやすい、無理のない治療のかたちです。まずは一度、対面でゆっくりお話を伺い、あなたの状態や生活に合った通院の形を一緒に考えていきます。「通院が続けにくい」という悩みそのものも、遠慮なくご相談ください。
精神科のオンライン診療Q&A
オンライン診療は、対面と同じ効果があるのですか?
完全にオンラインだけで治療を受けられますか?
初診からオンラインで受けられますか?
どんな人にオンライン診療は向いていますか?
オンライン診療では、お薬はどうなりますか?
六本松こころのクリニックでは、オンライン診療をしていますか?
「通院が続けにくい」も、相談材料です
受診の形に迷っているときも、まずは一度お話を。
平日朝7時から、お仕事や学校の前に受診いただけます。
〒810-0045 福岡市中央区草香江2-1-5 AG六本松4F / 地下鉄七隈線「六本松」駅 徒歩2分
TEL 092-401-4556 / 平日 朝7時〜
主な参考文献(一次情報)
- Kishimoto T, et al.(J-PROTECT共同研究グループ). 精神疾患に対するオンライン診療の非劣性試験. Psychiatry and Clinical Neurosciences. 2023.(国内19機関・199名・24週間の無作為化比較試験)
- 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS「精神科診療におけるオンライン診療は対面診療と同等の治療効果」(2024)
- 厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
- 厚生労働省「情報通信機器を用いた精神療法の適切な実施に関する指針」/令和6年度・令和8年度診療報酬改定関連資料
ご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。引用した研究結果には対象・方法上の限界があり、オンライン診療の適否は病状や状況によって異なります。オンライン診療の実施内容や制度・診療報酬の取り扱いは改定により変わることがあります。お薬の調整や通院方法について不安があるときは、自己判断で対処せず、主治医または医療機関にご相談ください。気分の落ち込みや強い不安が続くときは、早めに専門機関へのご相談をおすすめします。
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